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「パリ燃ゆ」


パリ燃ゆ(1)新装版
私が「パリ燃ゆ」の第1巻を買ったのは、1983年。
大佛(おさらぎ)次郎も知らず(オオフツとか読んでた。フランスだから仏か?とか)、
何でパリが燃えたかも知らず、
ただ「パリ燃ゆ」という題名に惹かれて買った。
読んだのは、つい数年前。2003年くらいである。
20年もほったらかしにしていた。
なぜ思い出したように読んだかというと、
引越しのため本棚を整理して、その存在に気がついた、という次第。
「そういえば、1巻だけ買って、面白かったら次を買おう、と思ったんだっけ・・・」
以来、1ページも読まずに本棚へ。
その1ページをひもといてみると・・・・・・あまりの面白さに、1巻など、すーぐに読み終わってしまった。
「パリ燃ゆ」の冒頭には、ヴィクトル・ユゴーについての記述がある。
ユゴーはフランスの国民的作家だが、
多くのフランス作家と同じく政治的発言を多々発表、当局からにらまれることも多い人生だった。
ナポレオン三世時代には、亡命生活を余儀なくされているくらい。
私は2000年ごろからユゴーという作家に目覚め、
「ノートルダム・ド・パリ」「レ・ミゼラブル」を読んだ。
だからこそ面白く思う「パリ燃ゆ」だったかもしれない。
20年前にはわからなかったかも、とも思う。
人は歳をとるといろいろ見えてきて、人生が楽しくなるものである。
問題は、次の「2巻」を買おうにも、絶版になっていた点。
私は図書館で借りて読破した。
その「パリ燃ゆ」が、今年、復刻したというニュースに遭遇!
私が買った当時は1冊440円の文庫でしたが、
復刻版はお高いんで、万人に「買いましょう!」とはすすめられませんが、
図書館で借りてならタダなので、ぜひ読んでほしい作品です。
歴史好き、フランス好き、政治好き、浪花節好き、男のロマンが好き、
そしてNHKの大河ドラマが好きな人には特にオススメ。
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「パリ燃ゆ」は、1871年に起きた「パリコミューン」について書かれた歴史物語です。
フランスの歴史というと、
1789年のフランス革命がダントツに有名ですが、
実はフランスという国は、その後の100年で、次から次へと政治体制が変わりました。
「人権宣言」を高らかにうたい、王政を捨てたものの、
行き過ぎた「革命委員会」の恐怖政治があり、
周りの国々からのしめつけもあり、
気がつけば軍人ナポレオンも「皇帝」になってしまって、もとのもくあみ。
するとまた「七月革命」「二月革命」などの揺り戻しがあって、
「やっぱ庶民が王様ってのはダメ。血筋が大切」とばかりに王政復古も経験。
最後はまたナポレオン人気で甥っ子が皇帝になるというドタバタが60年くらいの間に起こった勘定。
国民はその嵐の中をかいくぐって生き延びたのでした。
ミュージカルの「レミゼラブル」の「バリケードのシーン」は、このあたりのことを描いています。
そして1870年、当時の支配者であるナポレオン三世は、ドイツと戦争を始めます。
いわゆる「普仏戦争」。
パリには物資が入らなくなり、現在の北朝鮮かそれ以上の飢えがパリ市民を襲いました。
そしてナポレオン三世はあっというまにドイツに捕らえられてしまいます。
フランスは、負けました。
勝てる見込みのない戦争であったとしても、「勝てる」という意見が国民を魅了するところは、
日本を見ているようです。
そんな中で「パリコミューン」が興ったのです。
1871年3月26日から5月20日まで、たった2ヶ月かそこらの短命だったこと、
最後にコミューン兵士たちが惨殺されて終わること、などから、
よその国の私たちは、花火のような単なる「事件」の一つとしてしか認識しないことが多いです。
あるいは、「人民による政治体制」が共産主義の旗印として持ち上げられたことで、
今や、かえってきな臭い印象を与えてしまっているかもしれません。
けれど、
この「パリ燃ゆ」を読んでいくと、ここには「自分たちの生活を自分たちで決めたい」という
私たちにとっては当たり前の感情、
「お上」ではなく、「市民」の1人ひとりが政治に参画していこうという気構え、
自分たちで正当かつ健全な選挙を実行しようという意欲が見えてきます。
もちろん、穏やかな話し合いだけで、ことは済みません。
スパイもいる。
押さえが利かず、突出するのもいる。
カネに流れるヤツもいる。
清廉潔白だけに、他人に厳しすぎる人もいる。
百戦錬磨の往年の貴族政治屋たちにいっぱい食わされたり、
まさかと思うような寝返りに、背筋を寒くしたり、
そこに繰り広げられるエピソードは様々に折り重なって、
まさに大河ドラマとして迫ってくるのです。

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