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「シーリーン」@東京国際映画祭

「こちとら自腹じゃ!」という
某監督の辛口映画批評番組(コーナー)がありました。
私は今回の東京国際映画祭ではプレスパスを持っているので、
プレス用の試写会別メニューも観られるのですが、
観たいものが重なったり、
あるいは観たい映画が試写されなかったりする場合は
一般用のチケットを買って席を確保しています。
いわゆる「自腹」ですね。
今日は試写が「タレンタイム」(マレーシア)、
自腹が「バリエラ」(ポーランド)と「シーリーン」(イラン)で、
ほかに一般上映作品「風が強く吹いている」(日本)の
舞台あいさつの取材に入りました。(舞台あいさつ後上映前に退場の決まり)
今日はこのうち、
イラン映画の「シーリーン」について、書きます。
井筒監督っぽく叫んでみたい。
「こちこら自腹じゃ!」
これ、
商業映画として成り立つんでしょうかね~。
同じ手法の短編映画「それぞれのシネマ」を
キアロスタミ監督は2007年に作っていて、
今回はその「アイデアを長編映画にグレードアップさせた」
と公式プログラムにはあるのですが、
これを「グレードアップ」と呼んでいいのかどうか……。
「シーリーン」は
ペルシアの王子とアルメニアの王女との悲恋を描いた
12世紀の叙事詩で、
とても有名なのだそうです。
そうですね、わかりやすく説明すると……。
「かぐや物語」の豪華絢爛絵巻物的映画があるとします。
あなたはスクリーンに背を向けて立っている。
あなたの前には100人の観客。
みな美人。なぜなら、みな女優。
映画「かぐや姫」がスタートする。彼女たちは一生懸命見る。
女優だから表情豊か。
くすっと笑ったり、顔をしかめたり、涙したり。
スクリーンはあなたの後ろなので、
あなたには音声しか聞こえない。
映像有りの前提なので、
ラジオドラマのように親切に状況を説明してくれない。
頼りは観客の表情と、セリフと、効果音と、音楽。
「どんな映画なのか?」
振り返ってはいけません。
そういうルール。
あ、コトバがわからない?
字幕はつけてあげましょう。
ほら、前の電光掲示板見て。
観客の顔といっしょに見られるでしょ?
読んでね。
「かぐや姫」知らないの?
日本人なら誰でもわかる話なのよ。
絵本とかもあるんだよ。
でもディズニー映画にはなってないから外国じゃマイナーだよねー。
オープニングで、
絵巻物映していたでしょ?
衣装はあんな感じだと思ってくれていいから。
え?
そんな大事だと思わなかったから
注意して見てなかった?
うーん、ま、しかたないか。
そこは想像してみて。
あとは、観客の反応を頼りに、
脳内上映してください!!
っていう映画でした。
「自腹」の理由のひとつは監督のアフタートークだったんですけど、
急遽来日が中止になり、
メッセージが上映前に読まれました。
「日本の観客は世界一忍耐強いので、
 日本の観客の皆さんと一緒にこの映画を観たかった」
というメッセージの「意味」を
思い知らされた映画ではありました。
映像を撮ると、当局に取り締まられるとか、
そういう事情があっったのでしょうか。
「豪華絢爛王朝絵巻」と
チャドルをまとった「観客」との落差で強調したかったのでしょうか。
チャドルの下に燃えたぎる、
激しい恋いへの共感を描きたかったのでしょうか。
ぜひ監督のお話が聞きたかったです。
キアロスタミ監督の熱烈なファンの方以外は
よく考え、ある程度の覚悟をもって、
この状況を楽しむことを前提にチケットを買いましょう。

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