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「ストロベリーショートケイクス」


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昨晩12時。
もう寝よっかなー、と思っていたら、
WOWOWで始まった「ストロベリーショートケイクス」(2006)。
街なかの商店街を歩く男の足首をしっかとつかんで、
パジャマのままずるずるとひきずられながら
「捨てないで~、捨てないで~」とうめく池脇千鶴の「それから」に目が離せなくなり、
とうとう2時まで全部見てしまいました。
「捨てないで~」から2年、
「あそこまでひどい捨てられ方したんだから、もう何でもできる」と
開き直って生きることにした里子(池脇)は、
デリヘルの電話番をしている。
デリヘル嬢の一人、秋代(中村優子)は、
学生時代の仲間で、芽の出ない建築家のキクチ(安藤政信)を一途に想っている。
おシゴト中の秋代はものすごいセクシーだけど、
キクチを誘い出して居酒屋で飲む時は、
スッピン・黒縁メガネ・Tシャツで男言葉だ。
彼に会うため「田舎から野菜を送ってきたから」とウソをつき、
スーパーでトマトを買いまくる秋代がカワイイ。
ちひろ(中越典子)は、フツーのOL。
ただただ、素敵な結婚に憧れている。
一生けんめい人に好かれようとがんばるんだけど、
結局裏目で周りからは煙たがられる。
恋人ができると、どこまでも一直線。
星占いを信じ、風水を信じ、血液型占いを信じ、
ありとあらゆる「運」をつかもうとしているのに、すべての「運」からもっとも遠い。
つきあい出すと男が「重い」と感じてしまうような、まとわりかたをしてしまう女だ。
(恋人役には、「硫黄島からの手紙」でブレイクする直前の加瀬亮)
そのちひろとルームシェアをしている塔子(岩瀬塔子)は、
プロのイラストレーター。
書店に平積みされている本の表紙や挿絵も手がけるようになっている。
ちひろが出勤している間、
一人黙々と絵を描く塔子は、実は過食症。
作品を仕上げるまでの、誰も助けてはくれない孤独、
そうしたプレッシャーから逃れるように、突然食べ、そして、吐く。
その長い長い葛藤があればこそ訪れる「アートの啓示」と、
作品の完成!
ようやく手に入れた魂の休息をふみにじる、世の中の意地悪に、
塔子はまた、指をノドにつっこんでトイレにへたりこむ。
ちひろ役の中越がいい。
人の顔色をうかがいながら、ヘラヘラ笑ってごまかしてしか生きられない女性を好演。
「いるいる、あるある」のオンパレード。
でも、他の誰より彼女は自分のことがわかっている。
わかっていて「女々しさ」と「表面的なやさしさ」で武装しているのだ。
だから、強い。
弱いけど、強い。
そこがよく出ている。
無表情に生きるデリヘル嬢・秋代がキクチと思いを遂げられた瞬間、
私は心から「よかったねー」とつぶやいた。
人間、たった一瞬でも真実があれば、それで生きていける。
心情を吐露するようなセリフはない。
無表情を決め込む秋代は、満面の笑みを浮かべることも、泣くこともない。
存在そのものだけでそれを表現する中村はすごい。
まったく関係ないと思われていた「里子・秋代」グループと、「塔子・ちひろ」グループが
中盤から道ですれ違うように交差していく構成が、また絶妙。
観るものに「どこで出会うか?」という関心を常に抱かせる。
都会に生きる4人の女性の孤独と生きざまを
淡々と、かつリアルに追った秀作。
現在公開中の「クワィエットルームへようこそ」と対にしてみると
きっとさらに面白いと思う。

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