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「私の中のあなた」


【40%OFF!】私の中のあなた(DVD)
娘ケイトが白血病だった。
条件が適合するドナーを必要とするため、次の子を産む。
それも「適合するドナー」として遺伝子操作をして、という念の入れよう。
そうして生まれた次女アナが、11歳になったとき、
「もう私の身体を姉のドナーとして使わないで!」と訴訟を起こす。
というストーリーである。
訴訟を起こした次女の視点で描かれる映画だが、
本当のテーマは「人の死を受け入れること」。
キャメロン・ディアス扮する母親は、
長女ケイトの難病を「治そう」とやっきになる。
そのために弁護士の職もやめ、娘の治療にかかりっきりだ。
ケイトのためにもう1人子どもも産む。アナだ。
10年たっても、それ以上たっても、難病は「治らない」。
でも、彼女は「治してみせる」と譲らない。
病気の本人であるケイトが、すでに達観し始めているというのに。
これは「勝ち組のカンチガイ」に対するアンチテーゼなのだと感じた。
この表現は行き過ぎかもしれないが、
どんな母親も、そして父親も陥りかねない、
ものすごく普遍的な「カンチガイ」をとらえた映画だ。
別に移植を必要とする難病や死に至る病に限ったことではない。
自らの人生を、自らの意志と希望通り、順風満帆に送ってきた人間にとって、
「自分ではどうしようもない結果」というものをつきつけられたときの戸惑いは
計り知れないものがある。
たとえば、不妊。
結婚すれば、子どもをほしいと思えば、子どもは授かるもの
と思い込んでいる人は多い。
しかし行き詰る場合がある。
「必死で努力すれば、必ず希望はかなう」という図式にあてはまらなくなる。
そのときに「あきらめる」という行為は非常に難しいものだ。
「あるがまま」「ありのまま」を受け入れるというのは、
本当に勇気のいる決断であり、人生観、価値観を変えることでもある。
また、
「ありのまま」を受け入れるっていうのは、「何もしない」と同義語ではないから、
受け入れた後、どう立ち向かうか、それはまた別の葛藤を生むことになる。
特に子どもをめぐって重要な決断をしなくてはならないとき、
まだ意思決定を委ねられない子どもに責任を持ち、
子どもの代わりに決断をし、
親として最善を尽くしながら子どもの主張にも耳を傾け、
それは本当に大変なことです。
私も経験ありますが、
大きくなったときに、「どうしてあんな手術を受けさせたの?」とか
「なんであんな病院でやったの?」とか、
逆に「なんで手術を受けさせなかったの?」とか
くってかかられるかもしれないな、と思いつつ
一つひとつの治療を選んでいくその難しさ、厳しさ。
治療とかに限りませんよね、
何か習い事をさせるとか、進路を決めるということも、
最近は子どもがまだものすごく幼いときに
親は「決断」を、迫られています。
映画の中では「訴訟」を通して様々なことが分かってくるのだけれど、
母親は最後まで、
容易には自分の姿勢を崩そうとしない。
そんな母のかたくなな気持ちをやわらげるのは、ケイトである。
余命いくばくもないケイトが、嘆く母の背中をさする様子は、
あたかも天使が下りてきたかの光景である。
「赦され」て生きるキリスト教のお国柄だからかな~。
ただただ、死にゆく子どもに赦され、癒やされて幕が下りるのだ。
もっといえば、
ケイトとアナ、2人の子どもたちによって問題が浮き彫りにされ、
その上その子どもたちに赦され癒やされて、母は次の道を歩めるようになる。
一緒に観ていた夫はべしょべしょに泣きながら、
「いい映画だった」と感動していた。
私も時折涙するも、手放し、というところまではいかなかった。
なぜなら。
やっぱり疑問に感じるのだ。
これは、親として、どうよ?
病気や治療や死と直面するだけでも子どもは大変なのに、
その上親の心のケアまで子どもに引き受けさせて。
親って大変だよ。
でも。
でも、それでも。
私は、子どもにゲタを預けてはいけない、と思う。
子どもに赦されておありがとうございます、っていうのは、
どっちが子どもかっていう話ですよ。
最後は親として、子どもの背中をさすっていかせてやりたいものです。
*原作と映画は結末に違いがあり、
 そのために「私の中のあなた」という題名が、映画にはちょっとそぐわない。

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