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「鳳凰 わが愛」

もう一つ、東京国際映画祭でロードショー前にお目見えする映画を。
刑務所で出会い、30年もの間離れ離れになりながらお互いを思いあった男女、
という実話をもとに、
日中合作で作られた映画「鳳凰わが愛」。
寡黙ながら直情径行型のリュウ(中井貴一)は、
自分の許嫁(いいなずけ)にちょっかいを出す金持ちの男の悪ふざけが許せず、
公衆の面前でコテンパンにのし、
それがもとで何十年と刑務所に入ることになってしまう。
最初は棟こそ違え、同じところに男女の刑務所があり、
労役もいっしょにやることが多かったのが、
途中から女性刑務所が別の場所になることから、
互いに思いあうリュウとホンは数十年を互いの生死もわからず別々に生きることとなる。
(念のため、ホンさんは最初に出てくる許嫁さんとは別人です~)
日本では優しくて理知的な男性を演じることが多い中井が、
のっけから無言で殴り、蹴り、不気味にニヤリとするところなど、
ギョッとするほどオソロシイ。
出色は刑務所の「先輩」リアン役のグォ・タォ。
チャン・イーモウ監督の「生きる」などで大活躍のグォ・タォは、
どんなセリフにも、ささいな仕草にも深みがあって
生きることの泣き笑いを、貧乏神と福の神を演じ分けるようにして表現する。
中国大陸で辛亥革命の嵐が吹き荒れた1911年(明治44年)から、
第二次世界大戦後、国民党と共産党が争って共産党が勝つ1949(昭和24年)まで、
リュウが刑務所にいる間に、
シャバではどんどん政権が変わる。
そのたびに、刑務所の主が変わっていくのがおもしろい。
「政権」なんてあまりに短命で、人間が生きるよりどころなんかにはなれないことを、
男と女の、つまり人間のもっとも原初的な営みと比較することで暗に浮かび上がらせる、
ジヌ・チェヌ監督わざありの映画。
時系列すぎてちょっと間延びするところもあるが、
その時系列を楽しむ映画でもある。
中井は主役だけでなく、プロデューサーという地位を得て乗り込んでいる。
いまや「国際派俳優」となった真田広之も同じようなことを言っているが、
外国人スタッフとアウェイ状態で撮影する映画の場合、
「主役なのにその場のモノ作りに意見が言えない」というのは、
かなりフラストレーションがたまるようで、
2003年「ヘブン・アンド・アース」で中国での仕事をした経験をふまえ、
今回に至っているとのこと。
この映画になぜ日本人が主役を務める必要があるのか、
それは映画の途中でわかってくる。
中井が中国にこだわる一つの理由が、
自分の誕生日(9月18日=満州事変勃発の日)だというのが、
彼らしいエピソードである。
鳳凰 わが愛
ロードショーは11月3日から、恵比寿ガーデンシネマにて

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