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「ベジャール・ガラ」@NHK芸術劇場

NHKの芸術劇場で、
東京バレエ団によるモーリス・ベジャールの追悼公演
「ベジャール・ガラ」を放送していました。
今年2月の公演です。
目玉はシルヴィ・ギエムによる「ボレロ」。
彼女は自分の公演フィルムのテレビ放送を認めない人ということで、
この放送はとても貴重ということでした。
その身体の使い方。
彼女を見るといつも「一分の隙もない」という言葉が頭に浮かびます。
「すごい」し、「やっぱりうまい人は違う」んだけど、
雷に撃たれたようなしびれ方には至れない。
なぜなら、
私にとって「ベジャールのボレロ」は、やはりジョルジュ・ドンのそれで、
野生味のある荒々しさの内に秘める繊細さ、という第一印象は
ほかの誰のボレロを見ても、どうしても拭いされないんです。
だから、
この放送内で私がもっとも引きつけられたのは違うところ。
首藤康之の「中国の不思議な役人」でした。
最初にこの演目を見たときは、
バルトークの音楽にかきたてられる不安と
ベジャールの振付の前衛性にのけぞり、
木村和夫さんによるおとなしめの「中国人」より、
女装が衝撃的に似合った大嶋大樹さんの「娘」にクギ付けだったんですが、
今回は
首藤さんの「中国人」が、異様なオーラを発していました。
次に来る身のこなしに、想像がつかない。
にゅっと出る腕。
不気味な不動。
素早いけれど音のしない回転。
「不思議な中国人」というより「エイリアン」に近い
理解不能な生き物を感じさせます。
以前は、
「妖艶で残酷な娘に翻弄される真面目な中国人」
と理解しましたが、
同じ振り付けでありながら今回は
「今までに会ったことのない男に恐れを抱く娘」と感じました。
殺しても、殺しても、生き返って娘を求め続ける
いわばおとなしめのストーカーが醸し出す空気、
「この人、なんかヘン」と思わせる何かを
首藤さんは登場した瞬間から体現していました。
私は、今まで数回しか首藤さんのステージを見たことがありませんが、
今回、本当に体のこなしが素晴らしい人だと感じました。
またうまくなったんじゃないか。
また鋭くなったんじゃないか。
そう思わせるものがありました。
もう若くはないけれど、若さを感じました。すごい人です。
若い、といえば、ジークフリート役を踊った柄本武尊も目を引きました。
彼は3月14日の「白鳥の湖」若手公演で王子役に予定されていましたが、
「時期尚早」ということで降板となりました。残念。
最近男性ダンサーの入れ替わりが激しい東京バレエ団ですが、
さまざまな経験を積んで大きくなってほしいと思います。

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