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「夢幻恋草紙―赤目転生」@赤坂ACTシアター

蓬莱竜太が歌舞伎の本を書く、と聞いた時、
最初は行くのをためらった。
暗い舞台になるだろうから。心が痛くなるだろうから。
モダンスイマーズの「凡骨タウン」を見て以来、
蓬莱の才能と社会の底辺をみつめる鋭い眼力に感服しながらも、
彼の突きつけるものを最後まで見届ける気力と体力が自分にあるのか、
いつも迷ってしまう。
(「凡骨タウン」のレビューはこちらから)
お恥ずかしいことに今回も勇気がなく、チケットを取らずにいました。
初日をご覧になった人のレビューを見て少し前向きになり、
「やっぱり見ておこう」「見ておかねば」という気持ちになったのです。
のっけから蓬莱ワールド全開で、
子どもたちの話から始まったときはもう
「この後この子たちにどんな運命が待ってるんだ??」とドキドキ。
でも、
市川猿弥、中村いてう、中村鶴松の3人がとてもうまくて、
そんな私の不安を取り除いてくれました。
ハムレットではなく、太郎が転生する物語。
いつもなら、生まれ変わることもできず朽ち果てていく蓬莱チルドレンが、
今回は何度も生まれ変わって、それも太郎は
「今度こそ、今度こそ」と人生を切り拓こうと一生懸命生きていく。
それがときに空回りするんだけれど、
「今度こそ」と思う気持ちも「大切な人を大事にしたい」気持ちも、
「それがなかなか伝わらない」歯がゆさも、そして
「あの人の幸せのために自分の幸せはどうするのか」葛藤する辛さも、
私たち誰にでもある願いや迷いなので、とても考え深い作品になっています。
中村勘九郎、七之助の兄弟以下、歌舞伎役者は技術があるので、
蓬莱さんは思ったとおりの仕事ができたのではないでしょうか。
これをきっかけに歌舞伎という劇作に深く触れたことは、
今後の蓬莱さんにとって素晴らしい経験でしょうし、
それは日本の演劇界にとっても財産になると思います。
では、これは新作歌舞伎として成功したのか?
歌舞伎役者がやればなんでも歌舞伎、とはいいますが、
役者の肉体だけでなく、歌舞伎の文法というものがあります。
文法をしっかり身につけていればこそ、
歌舞伎俳優は3日稽古しただけで本番に臨めるのです。
「あらしのよるに」や「ワンピース」は、
一見歌舞伎とかけ離れているようで、その文法にのっとって作られていました。
それで昔からの歌舞伎ファンからの評価も高いのだと思います。
私は、
この作品は歌舞伎というより新派の匂いがするような気がします。
歌舞伎役者でもできるけど、女優も含め、他の俳優でもできる。
必ずしも女方が必要でもない。
でも、底辺の人間の叫びのようなものは、歌舞伎の大切なテーマです。
今回は蓬莱さんが蓬莱さんの文法でそれを描きましたが、
きっと次回作は、歌舞伎の文法にもっと慣れ、
より歌舞伎らしいものをつくってくれると思っています。
宮藤官九郎も「大江戸りびんぐでっど」の次に「天日坊」を作ったんです。
自分の文法から歌舞伎の文法へ。
彼らにはそれだけの才能があります。
またその才能を信じて、「思ったとおりに書いて」と言う度量もすごいものです。
クドカンも蓬莱竜太も、10年後20年後、
黙阿弥や南北に匹敵する大戯作者になるかもしれません。
そうやって歌舞伎がずっと愛され続けることを私は望んでいます。また、
彼らが自分たちのテリトリーで現代劇を書くときも、
きっと歌舞伎が400年培ってきた演劇の粋を学んで、
さらに味わい深いものに変容すしていくことでしょう。古典は最高の教師です。
異種文化の交流とは、ケミストリー。
歌舞伎は生き物です。

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