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「元禄忠臣蔵」@国立劇場

真山青果の「元禄忠臣蔵」の一段、
豊綱卿と富森助右衛門を描く「御濱御殿豊綱卿」を観ると、
いつも、
豊綱卿と新井白石(勘解由)の問答のところで、寝てしまう私。
何度観ても、何度観ても、
ハッと気づくと、すでに新井白石はいなくて代りに助右衛門。
今度こそは!と注意深く科白に集中。
豊綱卿(吉右衛門)が勘解由(梅玉)のことを「先生」と呼び、一目おいている、
その上下関係が面白いな……
……と思ったのが、自分の記憶の最後。
その次に目を開けたとき、見えたのは、
やっぱり助右衛門(又五郎)でした。もう笑うしかない。
以前は、勘解由役の俳優の力量の違いかと思ったけど、
こりゃ、役者じゃなくて、ホンのせいかと考え、台本を買う。
とにかく、
豊綱卿と勘解由が、何を話したのかを知りたい一心(笑)。
読後感想。
1.分量、これだけしかないの?
かなりの時間、夢の中、だった気がするけど、ものすごく短いのね。
この瞬間になると寝オチしちゃう、スイッチみたいのがあるのかな?
2.すごく重要なこと書いてある。
この後、綱豊卿が助右衛門に根堀葉堀「企て」について聴きだそうとする、
その真情がここに明確に描かれていた。
私は、これをまったく聞かずにアテ推量で後半を観ていたんだな~。
3.ところが勘解由はあまり話をしていない。
語っているのはほとんど綱豊卿で、勘解由は相槌打ってる程度。
「あなたはどう考えてるの?」「そうそう、その通り」
「私の今までの講義をよく学んでおられますね、あっぱれ」みたいな。
でもね。
いろいろ書いてあるの。こう演じろ、ああ演じろって。
科白は少ない分、豊綱卿が「先生」と呼ぶだけの存在感を作らないと、
やっぱりいけない役なんじゃないかな、と思った。
4.ト書きが面白すぎ
歌舞伎の台本というものを、初めて買った(気がする)。
国立劇場の台本だからとは思うが、演技指導的な指摘が多く、
そういうふうな指示があってあの演技となるのか、と興味深く読む。
しかしそれより何より、ト書きが読み物のようで、面白い。
真山さんだからなのかどうかはわからないが、
舞台装置の小物一つひとつに込められた存在意義も書かれていて、
へえ、そうか~、と舞台を思い出しながらも観劇そのものとはまた違った感動が!
この演目をまた観る機会があったら、そのときは異なる感慨があるかもしれない。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
さて、「白石のナゾ」はこのくらいにして。
「元禄忠臣蔵」は通しで十作あり、
最初に書かれたのは「大石最後の一日」だそうです。
私は團十郎の内蔵助で見た「南部坂雪の別れ」が印象深いですが、
「仙石屋敷」を初めて観たときは、「ヒーローインタビュー」が連想されて、
そこがとても新鮮な感じがしました。
今回、「江戸城の刃傷」も見て、気づいたこと。
いわゆる「松の廊下」の場面なんだけど、もう「刃傷」は終わってる。
「仙石屋敷」も、いわゆる「討ち入り」の場面を描かず、
吉良屋敷から引き上げる浪士たちに焦点を当てている。
この「江戸城の刃傷」も「仙石屋敷」も、
「聞き取り」場面なんだよね。
今でいえば、殺人や殺人未遂事件のあとの取調べ、みたいな感じ。
同じ赤穂浪士の仇討ちを題材にしても、
「仮名手本忠臣蔵」はこれでもかと涙とアクションをてんこ盛りにして、
ジェットコースター物語に仕上げ、江戸庶民を熱中させたけれど、
真山青果は新歌舞伎を作るにあたり、
この「元禄忠臣蔵」で、
静かな演劇、対話のみで再構築しようと試みたってことなのかしら。
…ていうか、そんなこと、前から言われていたよね?きっと。
私が知らなかっただけかも。
例によって、
資料集やら脚本やら筋書きやら、いろいろ買い込んでしまいましたので、
それらをすべて読めば、
彼の真意がそこここに書いてあることでしょう。
最後に。
又五郎の助右衛門、よかったです。
亀治郎の助右衛門は、クレバーな感じでしたが、
又五郎は猪突猛進的な人のよさに溢れて、
切れるがちょっとやさぐれた豊綱とのバランスがよかった。
探りあい、というより、おちょくられまくる前半があるからこそ、
最後の「ひと言」に豊綱がぐうの音も出なくなるんだろうな。
歌六、東蔵はさすが、
歌昇の源五右衛門、錦之助の磯貝も美しかったです。
吉右衛門は、楽近くでありながら、ところどころ科白にもたつきがあったのが
ちょっと心配されます。
吉右衛門に限らず、
この世代の重鎮方は、この2~3年で明らかに体力が下がっているように見える。
ということは、
今も現役の藤十郎とか、晩年足には来ていたけど若さを感じた故富十郎とか、
なにもの????
むむ、恐れ入りましてございまする。
富十郎といえば、鷹之資くんにも久々会いました。
今回は科白劇ということで、踊りのようなわけにはまいりません。
声変わり前ですが、子役というには大きすぎるから、
一本調子な科白回しを貫くこともできません。
ここから数年が、もっとも難しい時期でしょう。
その数年を、その後に羽ばたくための準備と見定め、
しっかりお稽古に励める環境と精神力とが彼に備わっていますように。
今の又五郎さんの大成を見れば、
辛抱のときをどう過ごすかがいかに大事かがわかります。
歌舞伎役者は本当に長く現役を続けられる職業なので、
がんばってほしいです。

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