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Kバレエユース「白鳥の湖」@オーチャードホール

「姉さん、事件です。
 Kバレエユースの白鳥の湖、予想をはるかに上回るレベル。
 恐るべし、クマカワ・チルドレン。
 オデットの新井友里、プロ!
 王子の福田昴平はノーブル。
 驚異はベンノ役の益子倭!そこに熊川がいるのかと思った!
 彼のバジルでドンキ観てみたい〜‼
 これから後半。オディールは大井田百。
 どうなることか、ワクワクします。」
・・・以上、
8月3日のKバレエユース第一回記念公演「白鳥の湖」の幕間に、
facebookにアップした文章です。
本当のことをいうと、
第一幕でパ・ド・トロワが始まったくらいから、
胸がいっぱいになってしまった。
初めてKバレエがチャイコフスキーの全幕ものをやった「眠りの森の美女」のときより、
ずっと安心して観ていられました。
パ・ド・トロワの3人、よかった。
特に大塚卓。足、長すぎ~。
もう少し体力がついて、長時間レベルを落とさずに踊れれば、王子も行けるかも。
とにかく、Kの本公演と、パッと見、それほど遜色ないんだもん。
たしかに、コールドがちょっとそろってなかったり、
音楽に乗りきれない子がいたりはした。
王子様のために踊ったのに、王子様の前をあいさつもせずに退場しちゃったり、
飲み物も、王子様をさしおいて、先に配っちゃったり、と
わかってないな~っていうところはあった。
でも、
いわゆる「おさらい会」ではないわけですよ。
きっちり決める。
Kの素晴らしい衣裳や舞台美術に負けてない。
途中、コールド同士が接触してお盆の上のカップをぶちまけるアクシデントがあった時も、
周りの人が「役柄として」きちんと物語の中で拾い、
何事もなかったかのように上手、下手に散っていった。
堂々たるパフォーマンスでした。
Kバレエスクールの10年を記念して、「おさらい会」でもいいけれど、
それでは次につながらないから、と、
熊川氏は思い切って「ユース」を立ち上げ、「第一回」と銘打った。
それを決めた1年前、きっとここまでの成功までは見えてなかったと思う。
それを可能にしたのは、
「1年後、満員のオーチャードホールで踊ろう!」を合言葉にがんばった若者たちだ。
とにかく、足先がきれい。動きが優雅。スプリット180度。
平成生まれの、手足の長いプロポーションがなおさら美しく見える。
驚異は次々と続く。
もっとも驚いたのは、二幕のパ・ド・ドゥ。
7/31の「夏休みバレエ音楽コンサート」では、
8/4のペアである田中莉奈と浜崎恵二朗が踊ったが、
正直、ほかの演目に比べ、硬さが目立って華に欠けた。
しかし、全幕の中で踊る8/3の新井友里と福田昴平が醸し出すオデットと王子の愛の物語の
なんと濃密なことか!
彼ら、まだ20歳そこそこだよね?
この表現は、21歳の熊川にもなかなかできなかったことだと思ったよ。
どうして彼らには可能だったか?
答え。
「今」の熊川哲也が、荒井祐子と指導したから!
この公演に向けて、
熊川は1幕を小林由明、2幕を荒井祐子、3幕を白石あゆ美、四幕を吉田恵に
責任を持たせて指導にあたらせた。
2013年2月11日に行われたという「特別講座」が、
彼らのスタンスを物語っている。
「白鳥の湖」の世界観を理解するために、「マイム」「ストーリー」「登場人物」「構成」「舞台美術」「衣裳」「音楽」にわたって講義があり、
その最初を飾ったのが熊川による「マイム」の講義だったのだ。
熊川は荒井とこの「出会いの場面」を踊って見せる。
そして、そこにこめられている精神のすべて、
21歳のとき、ロイヤルのプリンシパルであっても踊らせてさえもらえなかった
それから20年の間に自らの中に蓄積したすべてを、
自分が育てた子どもたちに、すべてあかして見せたのだ。
私は、荒井/熊川のこの場面が本当に好きで、(詳しくはこちらをどうぞ)
だから彼らがこの講義にものすごい衝撃を受けたのが手に取るようにわかる。
ここは、「白鳥の湖」のキモである。
それを理解し、踊り、振り付け、作品をつくった熊川からの直伝なのだ。
新井百合のマイムは全幕を通じて非常にはっきりしていて、
オデットの苦悩をくっきりと印象づけた。
どちらかというと、
田中は、運命に流され耐えるオデット、新井は、運命に翻弄されながらもがくオデット
という感じがした。
もがきながらも凛としている。姫としての気品があった。
気品といえば、福田の王子もよかった。
彼は王子としてのノーブルなたたずまいが自然。
4幕のコーダのピルエットは足が綺麗に伸びたままたくさん回転して、
実力もあることを証明したけれど、
このノーブルさは武器になる。すごいと思った。
私が一幕だけで「驚異」と書いたベンノの益子は、
本当に熊川そっくりなのだ。立ち居振る舞いが。
パンフレットに「総監督の息の根を止めるダンサーになりたい」と書くところも(笑)。
イギリスに留学もしていたらしく、
演技がほかの人より3まわりくらい大きい。
3幕のソロではちょっとふらついてしまって、
まだまだ「息の根を止める」までは遠いことを露呈してしまったが、
ジャンプも大きいし、滞空時間も長いし、
華があってとても楽しみ。
彼のバジルはぜひぜひ見てみたいものである。
オディールの大井田百もよかった。
今回はオディールとオデットが別の人がやるバージョンなので、
オデットとの対比がはっきるするようにしていたと思う。
片足ポワントで微動だにしない見せ場も、どうだとばかりにクリア!
4幕でのオディールの立ち位置にもっと想像をふくらませたら、
さらによくなったのではないだろうか。
久々にオデット/オディール別役バージョンを観て、
4幕の音楽の使い方に改めて脱帽。やはり熊川の音楽センスは素晴らしい。
少しインパクトに欠けたのは3幕だろうか。
キャラクターダンスに期待しすぎてしまったかもしれない。
ナポリでのタンバリンの使い方がよくなかった。音楽にのっていなかった。
スペインも、4組とも凡庸。
チャルダッシュはよかった。特に、兼城将は切れがあった。
マズルカの男子2人はまだ幼く体も小さかったが、踊りは丁寧で将来が楽しみである。
女性陣では、2幕の2羽の白鳥を踊った大内麻莉と高橋すみれが素晴らしかった。
今回、主要な役を演じた人々の大半は、
すでにKバレエでartistとして踊っている。
Kの人たち、うかうかしていられないよね。
後輩は、すでに主役を経験しているわけだから。
ものすごい緊張がKの中に起こるだろう。
また、
今回はKバレエスクール出身者だけで固めたけれど、
「Kバレエユース」はそれに限定せず、オーディションで公演を行っていくという。
すごいな。
究極のアンダースタディだから。
これはもう、ほんとに日本に
ロイヤルバレエスクールやオペラ座バレエスクールに匹敵するものが
できつつあるっていうことじゃないでしょうか。
熊川には子どもがいませんが、
クマカワ・チルドレンたちが熊川のDNAを受け継いでくれる。
そんな予感がした、第一回記念公演、
本当に、記念すべき第一回公演でした。

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