映画・演劇・本・テレビ、なんでも感動、なんでもレビュー!

  1. 舞台
  2. 10 view

「アントニーとクレオパトラ」vs「カエサル」vs「イリアス」

9/22「イリアス」@ルテアトル銀座
10/13「カエサル」@日生劇場
12/5「アントニーとクレオパトラ」@シアター1010
ギリシャとローマの骨太物語を3作見ました。
イリアスでは、
かつてアガメムノンン役で私の心をわしづかみにした平幹二朗が
トロイの王を演じました。
その平さん、「アントニーとクレオパトラ」ではタイトルロールのアントニー役。
クレオパトラは「カエサル」にも出てきますね。
期待度としては「イリアス」>「アントニー」>「カエサル」だったんですが、
満足度としたら「カエサル」>「アントニー」>「イリアス」かな~。
「イリアス」は、
新妻さんとか内野さんとかを出して音楽劇に仕立てた点が
まずムリだった気がする。
歌、いらなかった。
内野さんのアキレウスに、神の子としてのオーラが足りなかった。
池内さんのヘクトールはよかったし、
平さんもさすがだったけれど、
この話はアキレウスがかなり我がままな役なので、
彼を前面に押し出した展開で彼の行動に共感できないと、すべてが台無し。
ヘクトールがイケメンで正義感の強いデキスギくんタイプなのでなおさら。
アキレウスの悲哀とか、孤独とか、マグマ的な強さとか、
そういうものが彼の中の矛盾を全部押し流して「つ、強い!」と他を圧倒し
やぱり神の子だからしかたないよね、と次元の違う戦いを諦めさせる、
そんな部分が必要なのだ。
「カエサル」
レビューにも書いたけれど、幸四郎のカエサルが圧倒的によく、
時間が経つにつれ、そのいいイメージが増幅されていく感じ。
ほかにいろいろな弱点はあったけれど、
弱点は印象も弱いので、どうでもよくなってくるから面白い。
「カエサル」に出てきたクレオパトラ(小島聖)はあまりに威厳不足だったが、
それでは「アントニーとクレオパトラ」のクレオパトラがよかったか、というと…。
このプロダクション、シェイクスピアの時代の踏襲を狙ってオールメールなんです。
クレオパトラ、松井誠。
申し訳ないけど、これはミスキャストだわ。
特に前半はひどかった。
どう見たってキャバレー勤めのホステスが愛人になった感じにしか見えない。
たしかに、
シェイクスピアはクレオパトラにあまり好意的ではない。
アジアの女が誇り高きカエサルやアントニーを色仕掛けで迷わせた、という
白人からの目線が原作の中でもふんぷんとしている。
でも私たちは史実として
彼女もまたローマ人同様誇り高く、
その上で美しく、頭がよい女王だったことを知っている。
ところが当のクレオパトラより、
彼女にかしづくマーディアン(小沢道成が好演)のほうが
ずっと品があるようにみえてしまうのだから困る。
そのギャップが埋まらないまま最後まで行ってしまった感あり。
また
クレオパトラはシーザーとアントニーと2人のローマ人を愛した。
それは愛なのか、エジプトや自分の地位を守るための方便だったのか。
アントニーの屍にすがって泣くクレオパトラの涙は本物なのか。
先ほど書いたことと矛盾するように聞こえるかもしれないが、
最初は「計算」だった可能性は高い。
それがいかにして「計算外」になっていくのか、
そのあたりに説得力がないと私は物語に入りこめないな、と思った。
時代性、お国柄、文化。
いろいろなものが絡み合って、今では通じなくなっているのか、とも思ったが、
たとえば「ヴェニスの商人」が、
かつてシェイクスピアが笑いものにしたユダヤ人が今や悲劇の人となって
演じ続けられていることを考えると、
クレオパトラの演じ方は、もっと深く考えなければならなかったのではないか、
もっと違うやり方があったのではないか、と思えてくる。
それにしても。
70歳を超えた平さんが、
腹筋をガンガン使いながら大きな声でセリフを叫んでいる。
なんという体力、なんという摂生。
アントニーだってわけのわからないところたくさんある破綻した人物なのに、
平さんがやると彼の弱さやずるさも含め、納得できちゃうところがすごいと思う。
もっとちがうクレオパトラで見たかったな~。
前半ホステスで、後半は芸者をひかされて貞淑な妻になった人、みたいな感じなの。
シェイクスピア劇なのに、文法が新派なんだよね。
それは、ちがうと思う。彼女が背中に背負った「エジプト」が見えてきませんでした。

舞台の最近記事

  1. 「桜姫〜燃焦旋律隊殺於焼跡」@吉祥寺シアター

  2. 8月・カンゲキのまとめ

  3. 青年座「DNA」@シアタートラム

  4. 「ブラッケン・ムーア 荒地の亡霊」@シアター・クリエ

  5. KバレエYOUTH「くるみ割り人形」@オーチャードホール

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

PAGE TOP