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「古事記」にはまってます

今まで、何度か「古事記」をちゃんと読んでおきたいと思ったことがあった。
でも
どうも2、3ページ進むと終わり。
古文だしねー。
今回、難波宮関連の本を何冊か読んで、
昔の天皇の名前もたくさん出てきて、
神社の名前もたくさん出てきて、
「あー、私は何にも知らないなー」と改めて感じた。
そんなとき、古本市で見つけた「古事記」。
同じ岩波文庫でも、出ている年によって装丁が違う。
私が「いいな」と思ったのは、1987年8月20日発行の第35刷のもの。
紙もきれいだったし、150円だったし、
活字にも、親近感がわいた。
根拠はないけど、読みたい気分を誘ったので、これに決まり!
読んでみて、アタリだった。
倉野憲司さんの校注、わかりやすいです。
「知らない」と思っていたけど、
逆に、けっこう知っているものが多いとわかった。
特に「上つ巻(かみつまき)」つまり神話の時代のものは。
「天の岩戸」「因幡のしろうさぎ」「海幸彦、山幸彦」「やまたのおろち」などなど。
たしかに知ってるは知ってたけど、実はちょっとちがうんだな。
子ども向けにリライトされた「むかしばなし」としての知識だったから。
ほんとは、けっこう色っぽい話、生々しい話のオンパレード。
神様の話とか、天皇の話とか思うから
かしこまったり、「事実か?」といぶかったりするのだけど、
「お話」としてみると、リアルです。
人間ドラマの核心に触れるものが多い。
たとえば。
イザナギにはイザナミという妻がいました。
イザナミは、たくさん子どもを生みましたが、
産褥のトラブルで死んでしまいました。
イザナギは黄泉の国まで行ってイザナミを生き返らそうとしましたが、
向こうの食べ物を食べた後だったので、
もう妻を連れて帰ることはできませんでした。
妻は見ないでって言ったのに、夫が後ろを振り返ったために
ゾンビになったところを知られ、
「よみがえり計画」はオジャンになったのです。
黄泉の国から帰るとイザナギは、
あの世のケガレを落とすために、海に入って服や体を清めます。
あっちゴシゴシ、こっちゴシゴシ。
すると
そのたびに、いろんな神様が生まれるの。
右のおメメを洗うと、アマテラス(太陽)。
左のおメメを洗うと、ツクヨミ(月)。
お鼻を洗うと、スサノオ(嵐)、などなど。
「オレも子どもを作れたぞー!」と、イザナギは喜びます。
そして3人の子どもを集めて言いました。
姉のアマテラスに「お前には、昼の世界をやろう」。
妹のツクヨミには「夜の世界をやろう」。
末のスサノオには「海をあげよう」。
上の二人の姉妹はお父さんのいうことを素直に聞いたのに、
下の弟は泣いてばかり。
「わしがせっかく分けてやった海を治めもせずに、
 どうして泣いてばかりいるんだ?」
「だってボク、ママに会いたいんだもん」
そうなんだ!
スサノオは、ママに会いたいんだ。
さみしいんだよね。
二人が姉で、末っ子が弟ですよ。
甘えんぼうに育つよね~。
スサノオって乱暴ものだっていう刷り込みがあるけど、
家族とか、兄弟の関係が凝縮されているように思う。
ちょっと「リア王」にも似てる。
あれは3人目も娘だけど、
コーディリアも、自分の感情だけに忠実で、
かたくなで、世間知らずで。
世の中、うまく渡れないのよね。
「因幡のしろうさぎ」も、
もともとは、ホメロスの「イリアス」に出てくる、
「絶世の美女ヘレネを誰が嫁にするか」みたいな話から始まる。
スセリヒメ(=ヘレネ)は、
たくさんの求婚者がいるなかで、
うさぎを助けたオオクニヌシと結婚したんだけど、
そのオオクニヌシ、たーくさん女を作るのよ。
特に、越後の国のヌナカワヒメにご執心。
すぐに「うん」と言わず、一晩オアズケをくらわせるような女には、
それだけで燃えてしまうらしい。
そこで正妻のスセリヒメがネチネチと嫉妬心を訴えるところがいい!
これから出雲から大和へ出立しようというオオクニヌシが
乗った馬の鞍に手を掛け、片足は鐙(あぶみ)にかけて
「行ってくるぞ」というときに、
「男のあなたは、立ち寄る場所場所に女を作るのね。
 私は女だから、あなたしかいないの。あなただけなの」
逆の話もしこたまある。
自分のほうが先に夫婦になったのに、
すごーく身分の高い(ていうか、神様の娘)人ともいい仲になられて、
子どもだけ送り届けて身を引く話、多いです。
「海幸彦、山幸彦」の話もその一つ。
でも、
この話、そこに行き着くまでもけっこうリアル。
お兄ちゃんみたいに釣りやってみたいなー、と思った弟が
「1回だけ釣り針貸して!」とせがむと、
兄はしぶしぶ貸すんだけど
弟、うまく釣りができずに釣り針を海に落としちゃう。
「ごめん、ボクの大事な刀を500に割って、釣り針いっぱい作って返すから許して」
「ダメだ! あれじゃなきゃダメ。返せよ、絶対返せよ」
これもありがち。
私も幼いときに、妹におもちゃを貸すのがいやでした。
貸したおもちゃが壊れようものなら、
「元に戻しなさいよね」「弁償しなさい!」など
無理難題を言って困らせたものです(汗)。
弟、浜でしくしく泣いていると、カメ仙人みたいなじいちゃんが寄ってきて、
「竜宮へ行って海の神様に会いなされ」とアドバイスしてくれます。
ていうか、
「木の上にのぼっていると、海の神様のとこの娘が寄ってくるから、
 その女になんとかしてもらいなさい」って、こりゃ、ナンパ指南だね。
そのナンパの仕方が、とーってもステキに描いてあるので、
そこは明日、ご紹介します。 
 

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