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「追悼・市川崑さんを偲んで」

夕べ、市川監督の追悼番組として、
平成11年に作られた番組の再放送をしていました。
市川監督83歳、「どら平太」を撮り終えた頃の番組です。
9年前ということで、市川監督もシャキシャキしてますが、
(まだ禁煙前ですね)
他に出てくる女優さんたちも若い。
それから、岩井俊二監督も、白くてポチャポチャしてて、学生みたいです。
(30代ですが)
市川監督のインタビューを聞いて、私が大いに反省したのは、
「原作をそのままやったんでは、ただのダイジェストになってしまう」
という言葉を聞いた時。
「原作どおりじゃない!」みたいな恨み言を「炎上」のブログで書いてしまった私を、
彼は9年前から喝破していたわけで。すみません。
「原作どおりじゃない」ことに、どの原作者も不満を漏らしたようです。
「よくケンカした」「いろいろ言ってきた」「大論争になった」
市川監督は何をネタにしても、
とにかく「自分」の作品を作ろうとしていたわけです。
当たり前といえば、当たり前。
要は、
原作どおりじゃないところに、共感できるか、
あるいはそこに斬新さがあるか、原作を越えたオリジナリティがあるか、
ということなのでしょう。
この頃は、
まだ「犬神家の一族」のリメイクの話もなく、
岩井俊二監督による「市川崑物語」の話もなかったけれど、
その片鱗が、番組の随所にあるのが興味深かった。
岩井監督の言としては、
市川監督の作品を発表順に見ていくと、たとえば
「おとうと」「ビルマの竪琴」「犬神家の一族」と、
どちらかというと、最初の方の作品の方が、円熟期に作るような作品で、
後から作ったものの方が若い時の作品みたいに思える、
というのが面白かった。
「若い」という言葉は、「どら平太」の出演者からも何度も聞かれる言葉でした。
役所広司や片岡鶴太郎が「お若いです」というのはわかるけど、
当時72歳の大滝修治(蚊取りのCMで「お前の言うことはつまらんッ」という、あの人)に
「お若いです。私もあのように歳をとりたいと思う」
……と言われてしまうと、
どーしてよいか、わかりません。
吉永小百合さんのインタビューも面白かったです。
「おはん」では、
今までにない役柄への挑戦をどうやっていくか、阿波の人形芝居を引き合いに出し、
「そうだ、監督が人形遣いで、私は人形になる。何でも監督の言うとおりにしよう」と決意。
かたや「映画女優」では、
主人公の田中絹代が溝口監督と常にぶつかりあっていたその緊張感と同じように、
「私も市川監督に負けないような気持ちで」臨んだ、と言います。
「細雪」のキャスティングの話もなかなか。
岸恵子が
「私がやるのはミスキャストです、山本富士子さんが適役って申し上げたら、
 そうなんだけど、彼女が出られなくなっちゃったから、仕方なくキミで、と言われた」
といえば、
山本富士子も
「お芝居の予定が入っていなければ、絶対受けたんですが。
 出来上がった映画を見て、もっと残念に思いました。今でも出たかったと思う」という。
岸の笑顔の中に、
山本富士子を持ち上げているようでいて、実は「やったもん勝ち」の余裕が見て取れ、
別々のインタビューでありながら、火花散る女優の闘いが浮かび上がってまいりました。
それだけ、いい作品でいい役を演じられるチャンスというのは、
そうそうめぐってこないということかもしれません。
「ビルマの竪琴」で水島の役をやった安井昌二も
「たくさんの映画に出るより、この一本、という映画に出られた幸せ」を噛み締めていました。
NHKではBSで、
今夜から連続して市川監督の作品を放送します。
今夜は「細雪」。
私も大好きな作品です。くぐもった感情が、最後の花見で美しく昇華していく名作。
「ビルマの竪琴」「おはん」などなど。
気になる作品、もう一度見たい作品、ぜひぜひ、お楽しみください。

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