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完結「人間の條件」(第六部・死の彷徨篇)


人間の條件 DVD-BOX
小林正樹監督が、12時間かけて描きたかったものは何だったのか。
見終わった時、私は主人公・梶(仲代達矢)の顔つきの変貌に、
哀れさを感じた。
唾棄すべき男・桐原を鎖で殴り倒して収容所を脱出する梶には、
理想のかけらも残っていない。
ただ妻のもとへ帰りたいという欲望だけで生きる、
短絡的・直情的な男になっている。
あれほど人間を信じ、平等を信じ、やさしさを信じていた梶。
自分に嘘をつくまいと、懸命に戦中を生きた梶が、
戦争によって、肉体的にも精神的にも蹂躙(じゅうりん)され、
その心は荒み、ささくれ立っていく。
自分に正直に生きようとすればするほど敵を作り、窮地に陥り、
結局、自分の目指すものが遠くなっていく。
不器用な男が生きるとは、こういうことなのか。
彼の友人たち、沖島や丹下などは、
そうした梶にことあるごとに真摯な助言をしている。
しかし、
梶は聞く耳を持たない。
自分に自信がある。
あるいは、そこを曲げてしまったら、生きてゆけない。
雪の大地をさまよいながらも、
「自分は間違っていなかったよな」
「それとも、丹下が正しいのか」と自問自答し続ける梶。
五味川純平の自伝的小説を映画化したものと聞いていたので、
「梶」が五味川氏を表しているとばかり思って観ていた。
でも、五味川は生還し、梶は大地に倒れた。
戻ってこれなかったたくさんの青年たちの心を、
彼は日本に帰してやりたかったのかもしれない。
「自分は正しかったのか」それは、梶だけでなく、
五味川の叫びであり、小林の叫びである。
答えは、まだない。

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