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機中で見た映画4作

ニューヨークの行き、帰りで映画を何本か観ました。
「バーレスク」と「英国王のスピーチ」はすでに観ていたので、
ほかのものを。
「ナルニア国物語 第3章 アスラン王と魔法の島」
「ガリヴァー旅行記」
「トロン レガシー」
「ザ・ファイター」
私、イヤホン(ヘッドセット)ってちょっと苦手なんです。
それで、飛行機で映画を観るときは、イヤホンを使いません。
字幕があるのが一番いいけど、なくても音なしで観る。
すると、
ふつうに観てるときとちがったものが見えてくることがあります。
映画の本質とか、俳優の表情の深さとか、そういうものを感じられる。
逆に次への展開があっさり見えてきちゃったり、
底の浅さがわかってしまうときもあります。
さて、
観た中でもっとも面白かったのは「ザ・ファイター」
アカデミー賞各賞に多くノミネートされただけのことはあります。
筋は単純なのに、
一人ひとりの人物の考え方や人生が、本当によく描かれていて、
「描かれていて」というより「それを想像させるシーンがあり」
物事はそう単純じゃない、ということが体感できます。
その上でのたたみかけるようなクライマックス、
そしてハッピーエンド。
なぜハリウッド映画は「ハッピーエンド」なのか、
その理由がわかるような映画です。
人間は、人が幸せになってほしいようにできているんだわ。
努力は実ってほしい。
挫折から立ち直ってほしい。
悔い改めた人にはチャンスを与えたい。
世の中はなかなかそうならないけれど、そのギリギリの不幸を描きつつ、
最後に勝ち取るハッピーエンド。
これこそがカタルシスなんだな、と。
同じ格闘技もので「レスラー」もよかったですが、
これは、絵に描いたハッピーエンドにはなっていない。
ラストは「負けいくさと分かっていても挑んでいく」という形になっている。
けれど、主人公の気持ちの上では、「ふっきれた」というところがカタルシスにつながる。
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「トロン レガシー」も面白く観ました。
けれど、人物相関図が、まんま「スターウォーズ」だな~。
キャラクターも展開も典型的すぎて。
舞台が「電子」なだけで、そこで行われていることに
まったく新しさがない。
それを「人間は変わらないものさ」と「典型」を楽しむ人なら
OKな映画でしょう。
いわゆる「安心して見られる」感じ。
3Dの大画面で見なくても、そこそこ楽しめました。
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「ナルニア物語」の映画は、
私は何度も言うけどアスランが白いライオンじゃない時点でもう60点マイナスなので、
これまでの作品も映画館には一度も足を運んでおりませんが、
テレビなどでは観るとはなしに観ております。
その中では、今回のものが一番原作の匂いを残しているような気がします。
(日本の題名は「アスラン王と魔法の島」っていうハリーポッターみたいなタイトルですが、
 この第3章の原作タイトルは「朝びらき丸東の海へ」です)
さて
「ナルニア物語」はC・S・ルイスが
戦時中に疎開している子どもたちを楽しませようとして書いたファンタジーです。
親と離れ、空襲を恐れ、物資は乏しく、
子どもらしい笑顔や瞳の輝きが失われるのを悲しんだから。
絵の中に引きずり込まれる、という最初の展開も、
逆にいえば、「さあ、想像の翼で今のこの灰色の世界から飛び出していきなさい!」という
ルイスのプレゼント。
ナルニア物語の最終章「さいごの戦い」のそのまた終盤に
「内なる世界は外の世界よりも大きい」という言葉が出てきます。
子どものころは理解できなかったけれど、
今は、
「あなたは想像さえすれば、どんな世界にもいけるんだよ。
 たとえ行く場所をさえぎられ、閉じ込められても、
 心の中、頭の中ではどこにだって行けるのだよ」というメッセージなのだと気付きます。
たわいもないお話ですし、
予定調和で単純明快かもしれません。
でもそのなかに、
自分のなかの弱い心、いやしい心が何をもたらすか、
誰にでもそういう弱い部分があるけれど、
逆に勇気を持ったり、人を支えたりすることがいかに素晴らしいか、
そういうメッセージが、説教くさくなく、ファンタジーとして表現されているのです。
これは、子ども向けのお話ですからね。
戦時下では、子どもは弱者です。大人の足手まといです。半人前でしかありません。
そういう「子ども」がイニシアチブをとり、
大きなことを成し遂げようと主体的に考え、行動できる場を
ナルニア物語は彼らの心の中につくってあげているのです。
今、罹災して子どもらしい生活ができない子どもたちに、
「ナルニア物語」の本を送ってあげたいな、とも思います。
電気がなくても、本は読めます。(夜はダメだけどね)
大人たちが読み聞かせるのもいいな、と思う。
自分たちも避難所から飛び立てるのではないかしら。
…ただ、「海にのまれる」という最初のところは、今はちょっとつらい。
「想像」させること自体が罪かもしれない。
ダメだな、こりゃ。
(注)「アスランと魔法の島」の公式サイトで流している予告編を見ると、
    ほぼ全容がわかってしまい、ワクワク感がまったくなくなってしまいますから、
    その点ご注意くださいませ。
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今見るには「こりゃダメだ」と思ったのは
「ガリヴァー旅行記」も同じ。
これも船が嵐に巻き込まれて遭難するシーンがあります。
全体が喜劇なだけに、余計つらい。
それとこの映画、
別の意味からしても「こりゃダメだ」でした。
正直言ってほんとにつまらなかったです。
現代のニューヨーカーがガリヴァーになる話ですが、
話のひねりがまったくない。
発想が安っぽすぎです。
いわゆる子ども版「ガリヴァー」の部分しか使ってないし。
「現代におきかえて」っていうから、興味津津だったのに。
これじゃスイフトの原作に忠実に作ったほうがずっと「現代的」だと思います。

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