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「遥かなる大地へ」


遥かなる大地へ
アイルランドの大地主の令嬢シャノン(ニコール・キッドマン)と、
小作人の息子ジョセフ(トム・クルーズ)。
「新しいモダンな女」にあこがれるシャノンは、家を出てアメリカに行きたいと思っている。
そこへ、家を焼かれ父を亡くして地主の家に乗り込み、捕らえられてしまったジョセフとの
運命的な出会いが重なる。
シャノンは
「あなたを助けてあげるから、私の召使になってアメリカについて来なさい!」
みたいなタカビーな女。
ジョセフは、
シャノンが夢見るような「うまい話」など、たとえ新大陸にだってあるはずないと思いながら
アメリカに上陸してみると、自分のような階級の人間には生きやすいところだと直感する。
「オクラホマの土地がタダで欲しければ、早いもの勝ちのレースに参加しろ!」という、
ネイティブ・インディアンのことなんかかまっちゃいなかったアメリカ開拓時代。
「俺の土地はここからここまでーーー!」と線を引いたり旗を立てたりの滑稽さもあって、
なかなか面白い映画になっている。
アメリカに着くまでは、シャノンがジョセフを助けてきたが、
アメリカに着いてからは、ジョセフがイニシアチブをとり始める。
こうした「主従の逆転」を男女の恋愛物語のモチーフにする映画は多い。
この作品がちょっとしたメルヘンに仕上がっているのは、
二人とも、自分の中で「階級を越えた愛の存在」を認められないところだ。
好きで好きでしかたがないのに、絶対「好き」と言わない。
男は自分の無学を恥じている。
女は召使の軍門に降ることをプライドが許さない。
時代の常識に収まりきらず、
人々を蹴散らしてでも自分の思うままに生きようとする二人でも、
気がつけば世間の枠組みの囚われびとでしかない。
そのナイーヴさがかわいらしく、しかしはっきりと描かれている。
ジョセフはシャノンの、
当時の上流階級の女性としてはありえないほど激しい自己表現の強さを肯定しながら、
実は彼女の「金ぴかの家が似合う美しいお嬢様」である一面にこそ惚れている。
シャノンも「自分の土地を持って、女主人になるんだ!」という夢を持っていながら、
気がつけば「あなたの土地よ」とかなんとか言っちゃってる。
そこが、「理論」や「哲学」だけでは片付けられない男と女のDNAなのかもしれない。
アメリカ黎明の時代を描きながら、
どこかハイスクール白書のような青春映画となっていて、微笑ましい。

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