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「BIOMBO 屏風 日本の美」

東京乃木坂・ミッドタウン内のサントリー美術館で
BIOMBO 屏風 日本の美」開催中です。
昨日(9/12付)の朝日新聞夕刊「水曜アート」にも大きく取り上げられていました。
今回は、世界に散逸した日本の屏風が一同に会するという趣向。
あちこちに散逸して、
「明治以来、何十年ぶりかで右隻と左隻が再会した!」みたいなものもありました。
もう一つの目玉が
「西洋人(おもにイエズス会)が日本人に描かせた、西洋風の屏風絵」です。
馬に乗ったフランス王、ペルシャ王、エチオピア王などが描かれた
「泰西王侯騎馬図屏風」(サントリー美術館蔵)や、
歴史にも名高い海戦「レパントの戦い」を描いたものもあります。
この「レパント」の対になっているのが、なんと世界地図!
どこに「人食い人種」がいる、とかも含め、いろいろな民族の絵が描かれています。
(両隻とも、香雪美術館)
こうした「西洋風の屏風」は、まさに「屏風に描いた油絵」みたいなもので、
日本でいう「屏風絵」とは違います。
言ってみれば、
「折りたたんで持ち運びが便利」「船の上でも異国でも、その絵を鑑賞できる」といった屏風の形が、
西洋人に気に入られたのではないでしょうか。
屏風は、外国への贈答品としてよく使われていたらしく、
朝鮮通信使などを通じて朝鮮王朝に渡った日本の(和風)屏風などもありました。
「苅田雁秋草屏風」(狩野友甫宴信筆・韓国国立古宮博物館蔵)もそうです。
金地に雁の姿が写実的で、思わず見入ってしまいました。
王朝ではとても大切に扱われていた、という但し書きもありました。
贈り物として描かれたものは、どれも屏風の大きさも立派で、
また金箔が特にふんだんに施されているようです。
お産の時に立てかける、という「白絵屏風」(伝原在中筆)というのもステキでした。
薄いセピア色の地に、白色だけで鶴などが描かれています。
「出産」という神聖な場所で、生まれてきた子どもが初めて目にするものが、
この白い屏風。
妊婦の気持ちをリラックスさせるにも最高だなー、と思いました。
お産の時に「白絵屏風」、ということは伝わっていたけれど、
実物はこの一点くらいしかないということです(京都府立総合資料館蔵)。
私がもっとも感激したのは、「墨梅図屏風」(ライデン国立民族学博物館)。
金地に、大胆な梅の木が右隻に1本、左隻に1本で対になっている。
互いに向かって枝を伸ばしたその枝には、細かい梅の花がたくさんついています。
その枝や花の繊細な筆使いと、
どっしりと構えた太い幹の、荒々しいまでの野性味とが、
「金」と「黒」だけで表される中、まったく違った空気を共存させていました。
この「墨梅図屏風」は、その下絵(「金時墨画梅御伺下絵」)も展示されています。
A3用紙2枚を並べたような大きさの金色の紙に、同じように墨で描かれた1対の梅の木。
これを先に見たのだけれど、その時は「ふーん」とほとんど素通り。
紙の金がすごいなー、っていうくらいだった。
ところが、同じもの(ほんとにほぼ同じ)を大きな屏風で見せられた瞬間、
そのダイナミックさに脳天割られた!
狩野休清実信さんの頭の中にはこの屏風の世界があって、
それを「下絵」に描いて、
その「下絵」を見た人も、頭の中に屏風の世界をイメージできたってことですよね?
「うん、これはいい!」って。
自分の想像力の貧困さにがっかりしちゃいます。
そのものズバリを見せてくれたサントリー美術館に感謝。
この展覧会、9/1~10/21まで開催しているのですが、
展示品がどんどん入れ替えされていくのです。
全部で100点ほどの屏風や襖絵、その下絵などがあるけれど、
一回行っただけでは全部みられない。
私が行った時は、40点でした。
パンフレットがめちゃくちゃ厚いのは、全部載っているからなのねー。
もっともっと見たかったなー、というのが、正直な感想です。
それから、もう一つの感動を。
屏風は江戸時代、桃山時代のものが多いのですが、
一点のみ、「平安時代」の山水屏風がありました(国宝・京都国立博物館)。
11世紀後半、今から1000年(正確に言えば900年くらい?)も前の屏風です。
金属や木でできた仏像や建物ならいざ知らず、
紙ですからねー、屏風って。
よく残っていますよねー。
平安時代ですよ。
11世紀後半っていえば、
紫式部はもう死んじゃってますが、平清盛はまだ生まれてない。
白河上皇が院政やり始めたころです。
この屏風を立てかけたその部屋で、平安時代の人が息をしていた、と想像すると、
不思議な気持ちがしました。
あと、平安時代は「日本風の文化が育った時代」と言われますが、
描かれている山水は、中国の風景です。
日本の祭りや花見、狩、そして自然などを屏風に描き出すのは、
もっともっと時代が下ってからなんですね。
今、屏風が家にある人ってあまりいないと思う。
もちろん、我が家にもありません。
畳に屏風。
正座して、屏風の絵を見上げてみたくなりました。

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