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「ネトゲ廃人」


ネトゲ廃人
「ネトゲ」とは「ネットゲーム」の略である。
「ネトゲ廃人」とは、つまり、ネットゲーム中心の生活から抜け出せず、
リアル(現実社会)での生活に支障をきたした人々のこと。
ネガティブな意味だけでなく、
「そこまでやりきった!」勲章的にも使われるとか。
この本は、
「ネトゲ廃人」的生活を送ったことのある人々に
直接話を聞いて
人々は、なぜ生活がこわれるまでネットゲームにのめりこむのか?
という素朴な疑問から始まって
ネットゲームの長所と短所、
ゲームにはまる個人的な理由と社会的影響などを
非常にわかりやすい言葉でまとめている。
「ネトゲ廃人っていうからヲタクだろ」という予想を見事に裏切る、
キレイなおねえさんのインタビューから始まるのがミソ。
若い女性、主婦、夫婦ではまった人、少年、などなど
さまざまなタイプの「ネトゲ廃人」経験者が登場する。
さまざまな理由でハードゲーマーになり、
紆余曲折あって今は「リアル」でも居場所を取り戻している人たちがほとんどなので、
筆者がいうように
彼らほどの意志の強さや
絶対にあきらめずに支えてくれた人がいない場合
(おそらくそういう人のほうが多いかも)のことを想像すると、
胸がいたくなる。
興味深いのは、
子どものときからネットゲームに依存した生活をしてきた人たちが
「自分がいうのもなんですが……」と前置きしながら
口をそろえて
「自分の子どもには絶対にネットゲームをさせない」と言っている点である。
彼らが「ネットゲームで失ったもの」として挙げるものの多くは
「時間」だが
「リアルの人間関係」とか「まっとうな人生」というのもある。
グループを作って協力して敵(モンスターなど)を倒すゲームが多く、
6人集まらないとゲームが始まらない、
途中で抜けるとグループとしての戦力がガタ落ちになる、など
連帯責任的な部分があるため、
「途中で切り上げる」ことに罪悪感を覚え、抜けられなくなる。
そして、
ネットゲームでの人間関係や約束を守るためには
学校や会社に時間通り行くとか、友人たちとの外出など
リアルの世界での約束を反故にしてもかまわない、と思うようになる。
「私が眠ると、みんな死んじゃう」
というコピーは、そういう状況を端的に表している。
かくいう私の息子も
「7時に待ち合わせだったのに、一時間遅刻してきたヤツがいた」
などと話すので、
「え? 今日どこか行ったの?」と尋ねると、
「いや、ネットの話」だと。
もうリアルもバーチャルもないのである。
そんな息子にちょっと不安を覚えながらも、
(私だってmixiとかブログとかで、けっこう友だち作ってるし)
などと軽く考えていたのだが、
その息子が、やっぱりいうのである。
「子どもにはやらせちゃいけない」
深夜、小学生くらいのがやってるらしい。
リアルでの自我が確立する前にバーチャルにはまると、
「ゲームは所詮ゲーム」と割り切る思考がはたらかず、
もう引き返せない
、と息子はいう。
所詮、ゲーム会社がもうかるようにできている商業的な面なども
子どもにはわからない。
日本よりずっとネットゲームが盛んな韓国で
今何が問題になっているかも紹介されている。
(彼は韓国にも取材に行き、各方面の人たちをインタビューしている)
子どもたちのネットゲーム依存をなんとかしようとして、
ただやみくもに「禁止」するのは逆効果で、
まずは「時間制限」から、だそうだ。
「ゲーム自体が面白いから」
「ほしいまま昼夜逆転生活ができる環境があるから」
といった側面だけでなく、
ゲーム依存の裏に隠されている
現実社会から逃避したくなるような要因にも目をむけなければ、
この問題は解決しない、という面にも注目したい。
どんなものにもメリット・デメリットがある。
そのどちらをも受け入れつつ、
それでも「これは大変なことが起こっていやしないか?」という
ジャーナリストとしての嗅覚が書かせた本である。
ネット環境・携帯環境を是とする人も非とする人も、
子どもを持つ親は、必読。

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