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臨場感ありすぎの二・二六事件当日@「昭和史発掘」


昭和史発掘(7)新装版
昭和11年2月26日未明の午前3時ごろから、それは始まった。
今や「ミッドタウン」となり「国立新美術館」となった東京・乃木坂の
元防衛庁敷地に、
当時は歩兵第一部隊や歩兵第三部隊の兵舎があった。
そこから500人あまりの兵士たちが隊列をなし、
足元に積もった雪の明るさだけを頼りに音もなく進む。
一隊は六本木交差点を左に折れ、溜池から特許庁の手前を通って首相官邸へ。
一隊は赤坂御所や交番を巧みに避けながら、
外苑、信濃町、四谷仲町三丁目の斎藤内府私邸へ。
もう一隊は千鳥が淵の侍従長官邸へ。
塀を乗り越えるため、はしごを三つに切って持っていったり、
雨戸をまさかりで打ち壊したり、
暗闇の中で「尊王」「討奸」と合言葉を放ったり、
踏み込んだ寝所で無人の布団の中に手を入れ「まだ温かい」など、
それはまさに忠臣蔵の世界。吉良邸討ち入りの再現そのものである。
それらは清張の、というより
現場に居合わせた当事者の回顧録として
すでに書かれたものの集大成の文章である場合も多いが、
それら複数の人間の目を通した
いわば多元アングルによる「実況中継」にすることで、
行き詰るほどの臨場感が紡ぎあがっている。
瀕死の夫・鈴木侍従長のそばに凛として静かに正座する鈴木夫人、
やはり血まみれの斎藤内府をわが身で覆いつつ、
「護衛はどうしたの!」「私を殺しなさい!」と叫ぶ斎藤夫人、
単衣の白い寝巻きで雪の庭を逃げながら
「誰か!」と問われて「総理大臣だ」と答え、
影武者さながら身代わりになって果てた松尾伝蔵。
殺された斎藤内府が前の日アメリカ大使の家に招かれ、
「トーキー」映画を初めて見た、という時代である。
現場にいた誰も本当に岡田首相なのかわからず
床の間にあった写真と見比べて首実検したという。
「吉良かどうか」額の傷だけで確認したのと変わりはしない。
なにもかも忠臣蔵だが、
一つちがうところがある。
中心人物たちは別として、
大半の兵士たちは靖国参拝だ、演習だ、暴動鎮圧だといわれて駆り出され、
道の途中で「政府の重鎮たちを殺すのだ」と実弾を配られた。
彼らの多くはほんの1ヶ月前に入営した新兵たちだったのである。
どの現場にもドラマがあり、とっさの判断があり、
偶然が生死を分けている。
読書はまだまだ途中。
この先、どうなる??

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