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「12人の優しい日本人」

「日本にも陪審員制度があったらどうなるか」というコンセプトのもと、
三谷幸喜がこの話を書いたのが1990年。
もちろん名作「十二人の怒れる男たち」を下敷きにしたのは
タイトルを見ればわかる。
ここで彼が注目したのは、
「日本人に、長時間の議論なんて、できるのか?」ということ。
大体、「あなたの意見に反対」と言われると、
「私はあなたが嫌い」と言われたととる人が多いのだから、
議論が熱を帯びれば帯びるほど、感情的になり、
雰囲気が悪くなる。
「これが正しいと思うから」じゃなくて
「この人が好きだから」一票、なんてことも稀じゃない世の中。
だいじょうぶか、ニッポン?
三谷のすごいところは、
「声が大きい方に人はなびく」
「くどくど説教する人は嫌われる」
という現状から
「もっと冷静に、論理的にやりましょう」
ではなく、
「ふつうの感覚が、真実を嗅ぎ分けていることもある」
という結論にもっていったことだ。
日本人の「やさしさ」も、捨てたモンじゃない。
自分たちには、自分たちの進め方があってもいい。
そんな仕上がりになっている。
私は1991年に上演された映画版が好きだ。
配役は少し違うが、90年の舞台をほぼ忠実になぞっている。
出色は豊川悦司。
長髪、煙草呑みで議論の輪に入らず傍観していたから、
みんなもほとんど無視していたのに、
「実は弁護士なんです」と言った途端、頼りにされ出すという、
これまた日本人の肩書き信仰を見事に皮肉る設定も見事だが、
その飄々とした演技は、彼を一躍有名にしただけのものがある。
もう一人は、「あの~・・・」とあとから意見を言い出す
おどおどしたおばさん役の林美智子。
彼女の、世間に流されているようで流されない強さが
私たちの目を開かせてくれる。
日本でも近々に一般国民による裁判員制度が始まることになった。
「あれと同じことが起こるのか」と思った人も多いことだろう。
それもあってか、2005年に舞台は再演された
江口洋介、石田ゆり子、鈴木砂羽と有名どころを揃え、
山寺宏一や筒井道隆など三谷シリーズ常連も健在。
鈴木砂羽・石田ゆり子は好演が光った。
でも、私はやはり、映画版が好きだ。

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