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「遥かなる帰郷」

ドイツ軍によって強制収容所生活を余儀なくされていた人たちは、
連合軍が収容所を解放した時、すぐに出ようとはしなかったという。
「彼等はおずおずとあたりを見廻し、問いたげにお互いの目を見合わせるのであった。
それから…(中略)…最初のおどおどした一歩を踏み出すのであった」
(フランクル「夜と霧」より)
もはや、逃げ出したいという欲求さえ奪われていた、という言い方が正しいのかもしれない。
私は「夜と霧」よりはやく、このシーンを「遥かなる帰郷」で目撃しました。
この映画の主人公の実在モデルであるイタリア人プリーモ・レーヴィは、
フランクルと同じく、収容所から生還した一人です。
ユダヤ人ではない収容者はたくさんいたのです。
私が一番好きなシーンは、
一人のソ連兵が、フレッド・アステアのまねをして、音楽に合せ踊るところ。
窓越しにそれをじっとみつめる解放された人々。
収容所を出たからといって、すぐに精神が回復するわけではなく、
彼らは帰郷の道すがら、ずっと無表情です。
ところが、このソ連兵の気楽なダンスと音楽によって、ある変化が訪れます。
男達は、無言で女達をダンスに誘うのです。
暗がりでの強姦ではなく、ダンス。
心と心が触れ合う日常が戻る一瞬。人々の瞳に光が、口元に笑みが蘇えっていく…。
音楽が、ダンスが、私たちの心の幸せの素だと実感できる場面です。
これはプリーモ・レーヴィの自伝的小説「休戦」の映画化です。
解放から40年余りたっての映画化を彼は許可しましたが、映画の完成を見ることなく自殺しました。
その事実は重い。
けれど映画はプリーモがまだ希望を信じていた頃を映し出していて、
どこか清々しく、桃源郷の霞の中を歩くような感覚を覚えました。

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