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「ブラックブック」


ブラックブック(DVD) ◆20%OFF!
1950年代半ば、イスラエルに落ち着いている女性の回想という形で、
この物語は始まります。
ナチが支配するオランダで、
歌手という職業も奪われたユダヤ人女性ラヘル(ナチ政権化ではエリスを名乗る)が、
家族も恩人も、友人も次々と殺される中でいかに戦中戦後を生き抜いたかを
誇り高きオランダレジスタンス運動とのかかわりと
スパイとして潜入したドイツ側軍人の日常とを行き来しながら描いた秀作です。
「騙すつもりで近づいた敵軍将校と本気で恋に落ちてしまう」話は、
今までにいくらでもありますが、
この映画にとって、それは一つのサイドストーリーでしかありません。
「ブラックブック」とは、そこにすべての「真実」が書かれている
いわゆる「黒革の手帳」。
この映画の最後、ある人物の「ブラックブック」によって、
第二次世界大戦末期、ナチが侵攻したオランダで何があったかが、
明らかになるのです。
さまざまな人に助けられ、そして自らも全力で人を助けながら前向きに生きていくラヘル。
しかし、
自らもスパイとして人を「騙す」生活をしているラヘルは、
信じた人に裏切られることもまた、あるのです。
圧政下では誰でも、疑心暗鬼。
その息苦しさ、不安定さ、哀しさが、全身に伝わってきます。
その圧政から解き放たれた時、踏みつけにされてきた人々の中で爆発する狂気もまた、
「人間」なればこそ。
そう、人間の性善と性悪、正義とエゴ、愛と憎しみを丁寧に描いた作品です。
監督は、「氷の微笑」や「インビジブル」「ロボコップ」などを手掛けたポール・バーホーベン。
母国オランダで作ったこの「ブラックブック」は、構想20年だといいます。
戦後60年が経って、ようやく
イデオロギーではなくエンターテインメントの中に「あの時」を客観的に描けるようになり、
どちらの側にも、そして一人の人間の中にも、正義と悪が混ざっていた」ことも
観客に受け入れられるようになったということでしょうか。
ある戦時中の事実を元に作られた、というこの極上のサスペンスは、
それぞれの「ブラックブック」が存在しないために辛い戦後を経験した人々へのオマージュと
時勢の流れにうまく乗って、自らの負の部分を消し去り英雄視されてきた人々への
告発に満ちています。
深夜、録画していたものをふと見始め、気がついたらもう朝の4時!
ちっとも眠くなりませんでした。
150分と長い映画ですが、
まったく飽きることがありません。
第二次世界大戦とかナチスとかユダヤ人問題とか
何も知らなくてもまったく困らないです。
ぜひたくさんの人に見てほしい映画です。

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