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「声優口演2007with山下洋輔」(口演編)

昨日の続きです。
山下洋輔ニュークヮルテットの演奏を軸としたライブの後、
バスター・キートンの「探偵学入門」という85年前のサイレント映画を上映しました。
「今日のためにニュープリントにしたんです! お金かかってます!」と、
羽佐間さんが胸を張るだけあって、
ほんとにきれいな映像でした。
話もとてもおもしろかった。
「探偵学入門」という本を読んでいる映画技師が主役で、
恋敵に泥棒の濡れ衣を着せられて失恋寸前。
ある日、映画を上映していると、なんとその映画、設定はお金持ちのお話だけど、
無実の罪を着せられるところ、今の自分の境遇とそっくり!
・・・と思っているうち、気がつけば幽体離脱? 映画の中に自分が入りこんでしまい、
映画の主人公である探偵に乗り移って映画の事件解決!
そして自分の身にふりかかった濡れ衣や、恋の行方は・・・?という
奇想天外かつ二重の入れ子になっているストーリー。
「映画」の技術をうまく使って、ありとあらゆる「オモシロ映像効果」で盛り上げる。
この映画がカーチェイスの原点だった、というだけあって、
手に汗握る展開に、となりの席のオジサンも、思わず身を乗り出して鑑賞してました。
構成が緻密、そしてジェットコースターな展開、おもしろディテール、と
一本の映画としてもちろん一流なんですが、
映画の黎明期にあって
「こんなに映画っておもしろいことができるんですよ!」というプレゼンとしても一流です。
また、
バスター・キートンという人は、すべての撮影をスタントなしでこなしたということで、
「ジャッキー・チェンの憧れの人」という戸田恵子の説明に
さもありなん、とナットク。
喜劇とスリルの原点と言える名作でした。
口演は羽佐間道夫と戸田恵子。
13個のビリヤードの球のうち、1個(13番)が爆弾とすりかえられている!という場面なんか、
その爆弾ボールに当たりそうで当たらない試合運びを
羽佐間さんは何と鮮やかに口演することか!
その絶妙な間合い、かけあい、口ぶり。
それもナマですから!
洋画にアテレコという文化が始まって50年。
初めはナマだったらしいけれど、
アートだなー、とつくづく思いました。
「おはやし」は山下洋輔ニュークヮルテット。
この「おはやし」がものすごくよかった!
メインテーマがあって、
探偵が容疑者を尾行するところは、このテーマがピッタンコ。
また、車がクラッシュしたりする場面の効果音も抜群!
場を盛り上げて、ちっとも「うるさく」ありません。
映画音楽を手がけた経験があるからか、
山下節でありながら、本当に自然でした。
休憩をはさんで、第二部では山寺宏一が、
一人でチャップリンの「犬の生活」にアテレコ!
羽佐間さんのパフォーマンスがベテランによるオーソドックスなアテレコの頂点とすれば、
ヤマちゃんのアテレコは、
若き才能全開、300%のパワー炸裂、といったダイナマイトな空間創造。
犬が5匹に人間3人、一緒に吠えたり叫んだりしてるのを、
彼一人でやるんですよ! ていうか、できちゃってるんだから。
「そんなの関係ない!」などの流行ネタも飛び出すし、
女性に「出て行け!」と外を指差すところで「尼寺へ行け!」なんてセリフも織り交ぜ、
一つの笑いが終わる前に次の笑いが始まってしまう。
バーテンダーがカウンターに寄りかかりながら客に話すところなんぞ、
さりげなく「昨日巨人負けちゃったねー」なんて、
ほんとにそんなこと話題にしてるような雰囲気だから、よけいに可笑しくなってしまう。
チャップリンの笑いというのは、
日本人の笑いの文化に近いものがあるのか、
ヤマちゃんの講談のような落語のような話術と実にマッチしている。
外国語と縁のなかった日本人に映画のよさを知らせるために作られた
「弁士」というシステムは、
そのうち「吹き替え」という文化を生み出しました。
字幕には字幕のよさがあるけど、
吹き替えって、もしかしたら、本物プラスアルファの面白さを
私たちにプレゼントしてくれているかもしれません。
こういう文化が定着しているから、
ホットペッパーのCMみたいな理不尽アテレコが茶の間で大ヒットするんだなー、と
そんなことも考えた一日でした。
昨日ご紹介した11月3日の四谷の他に、
10月28日(日)も東京・文京区のバリオホールにて「探偵学入門」「野次喜多・岡崎の猫騒動」「のらくろ二等兵」(これはアニメ)の口演があります。
演奏は増田利男さん。
「口演って、どんなもの?」「サイレント映画って、どんな感じ?」という方、
一度ご覧になってはいかがですか?

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