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オペラ座の「ジゼル」@東京文化会館

「ジゼル」は何度も見ているけれど、
3/20昼のオペラ座の舞台は、まったく違うものに見えました。
今まで私が思い込んでいたジゼルとアルブレヒトは、
すでに恋仲で、デートに誘う、みたいな感じに思っていた。
でも、
アニエス・ルテステュのジゼルとジョゼ・マルティネスのアルブレヒトは、
「どうもかわいい娘がいるらしい」と噂を聞きつけたアルブレヒトが
初めてジゼルの前に姿を現す、という感じ。
だからジゼルはちょっと警戒気味だ。
知らない男の子と話すんだからね。
家に入ろうとしたり、なれなれしさをはぐらかそうとしたり、
いろいろするんだけどアルブレヒトはなかなか離さない。
そうこうしているうちに、だんだんアルブレヒトの魅力にはまっていく。
だって女の子を楽しくさせる術に長けてるからね。
でも、
決定的だったのは、ヒラリオンがやってきてから。
これまで、私はジゼルとヒラリオンって幼馴染みで、
ジゼルの方には恋愛感情こそないけど、それなりに仲が良い二人と思っていた。
ところが今回は、
もう完膚なきまでにヒラリオンの独り相撲。
イヤな男に告白されまくり、NO!といってもまだつきまとう。
そんなとき、
アルブレヒトは雄雄しく前にたちはだかって自分を守ってくれた。
ここで一気にジゼルはアルブレヒトの「真心」を信じちゃう。
そこからは、
かえってジゼルのほうが積極的になっていく。
もともとアルブレヒト、最初の段階で「誓い」のポーズやってますから、
ジゼルはもう二人は離れられない関係だと思い込んでるわけ。
この「思い込み」の強さが、
ジゼルをどん底に突き落とすっていう、その筋が際立ってた。
心臓が悪いっていうところも、本当にリアルに演じていたし。
心配するお母さんに
「ね、いいでしょいいでしょ?ちょっとだけ」って
いっつも目でお願いしながら踊っちゃう。
最初から髪をシニョンにしてないのも、村娘っぽくて自然だった。
二幕はもっとビックリ。
マリ=アニエス・ジローのミルタが全然怖くない。
ていうか、慈愛に満ちて温かい。
ものすごく尊厳が感じられ、「女神」のたたずまいだけど、優しい。
恋に破れて死んでしまった娘たちをやさしく迎える観音様。
男たちを殺すのは、
その彼女たちに対する気持ちだったり、
生前の煩悩を消し去ってあげようとする気持ちだったり。
そんなふうに感じた。
だから、自分がよかれと思ってアルブレヒトを殺そうとするのに、
その前に二度たちふさがるというジゼルの行動によって
自分の手にある枝が折れてしまったとき、
ミルタはものすごく動揺する。
「え、どうして?」っていうセリフが聞こえてきそうなくらい。
それでもアルブレヒトと、彼を救おうとするジゼルを踊らせ続けるミルタは、
ずっと顔をそむけていたりするの。
観音様の心の葛藤。
こんなミルタ、見たことありません。
ジロ姐さんの「どうよ!」的な完璧パフォーマンスが大好きな私ですが、
このミルタの造形にもまいりました。
「パリ・オペラ座のすべて」でも感じたことですが、
ジローにはいろんな引き出しがあるんだなー。すごい。
二幕の出だし、暗い舞台にスモークたっぷりの墓場は、
ものすごく幻想的っていうか怖くて、
ああ、ここでウィリに出くわしたらそりゃ怖いわって実感。
ここではアルブレヒトが墓碑に向かって歩くところが美しかった。
私、初めてわかったの。
バレエ用語に疎い私ですが、
5番の足先っていうか、つま先外に向けて、
一歩一歩足をすっすっとゆっくり出すんです。
きれいだったわ~。
バレエって不自然な体の使い方するから美しいっていうのは
こういうこと言うんだなって思いました。
ジョゼは40歳だって聞いて、ほんとにビックリした。
若い!きれい!スリム!
主要な人物はステキだったけど、
コールドはバタバタしていて、ん?これがオペラ座なのか?と。
実はワタクシ、恥ずかしながらオペラ座の全幕は初体験。
ルテステュのウィリが重力を感じさせない踊りだったので、
ギャップを感じてしまいました。
あと、オケが……。
東京文化会館で5階中央の席って、とにかく音が素晴らしいんですが、
3/20のマチネ、オケに切れがありませんでした。
とくに…私ってホルンとペットに異常にこだわりすぎるかな~。
でも、見てよかったです。とっても満足。
ほかのキャストの舞台もよかったと聞きます。
全部行けた人がうらやましいです。

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