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シネマ歌舞伎「ふるあめりかに袖はぬらさじ」

このところ、松竹が力を入れている「シネマ歌舞伎」。
歌舞伎を高画質の映像に収めることで、「世界中に歌舞伎を発信できる」がその目的だ。
でも、
「世界中」っていうより、日本でだって、
2000円で見られる歌舞伎中継、それも高画質・大画面っていうのは、とってもオイシイ。
今回は、「ふるあめりかに袖はぬらさじ」。
有吉佐和子の作品で、杉村春子主演の新劇が元祖、
その後、玉三郎も新劇やテレビの人などの混合チームの中で主演を続けていた。
演出は、今期「松尾芸能賞」で特別賞を受賞した、戌井市郎。
杉村春子とともに、文学座の草創期から関わった人だ。
彼は、かねてより玉三郎に「オール歌舞伎(役者)でやってよ」と声をかけていたという。
そして昨年末、
本当に歌舞伎座で、まさに「オールキャスト」の面々で、上演された。
物語は幕末、
開港した横浜の遊郭・岩亀楼を舞台とし、
吉原から流れてきた病弱なおいらん・亀遊(中村七之助)の死が、
時節柄「攘夷」と結びついて語り継がれてしまう
こっけいさ、そして哀しみを
亀遊を昔から知る三味線芸者・お園(坂東玉三郎)の「口達者」を軸に綴る世話物である。
七之助が光る。
いい女形だ。観客をひきこまずにはおかない。
命の消えかかる不安、恋の歓び、いとしい人へのイケズ、運命への隷従、
女の私でも、思わず肩を抱き寄せたくなるほどのいじらしさと色気が匂い立つ。
「三人吉三」の時も、思ったが、
七之助が男をじっとみつめれば、そこに何のセリフがなくても恋が生まれる。
大画面ということもあり、様々な表情を丁寧に演じているのがわかるので、なおさらだ。
あらすじを知らずに映画館に入ったので、
前半の幕切れ、「亀遊が死んだ!」はてっきりお園の狂言で、
死んだことにして、想い人の藤吉(中村獅堂)とかけおちするのかと思ったら、
幕間(映画だが、15分間ある)をはさんで後半、
「彼女が死んで3ヵ月」とあったので、本当にがっかりした。
それでもどこかで「亡霊でいいからもう一度出ないかな」と思ったほどである。
主役の玉三郎も、もちろん芸達者だが、
舞踊の美しさを期待していくと、そういう話ではないのでご用心。
玉三郎にこれほど喜劇的センスがあった、とは初めて知る。
しかし「白塗り」でない玉三郎を見るというのも、あまりない経験だ。
「美しさ」でここまで名の上がった女形なのに、その分野に挑戦するのか、と
半ば尊敬、しかし哀愁も漂う。
最後の最後まで傾城役をむねとした故・中村歌右衛門との路線の違いを思う。
早くから新劇とのコラボや、外国人演出の舞台への出演など、
歌舞伎以外にも積極的に参画した玉三郎ならではの、将来の見据え方なのだろうか。
遊郭の主人の中村勘三郎は、いつもながらの面白さ。
こういう役は、うってつけだ。
玉三郎とのかけあいも軽妙、あうんの呼吸で安心して見ていられる。
唐人口(とうじんぐち)という、西洋人向け女郎・マリア役で気を吐くのが、中村福助
歩き方1つ、口の曲げ方1つが既に可笑しく、楽しませてくれる。
幇間(ほうかん・たいこもち)・和中役の市川猿弥も口あとさわやか、
芸の確かさと自然さで場を支えた。
七之助の相手・通訳の藤吉を演ずる獅堂は、歌舞伎というよりテレビドラマの感じ。
テレビドラマだと思えば演技もピシッとしているが、
歌舞伎としては、まだ「型」がなく、輪郭が甘い。
「ドクトルになる」という「志」と、病弱なおいらんとの「恋」に揺れる青年の
戸惑いは表せても、
心の中にふと生じる「残酷さ」、
それにおののく「優しさ」、
その入れ変わりの瞬間、
それらがはっきりと伝わってこない。
最終的にお園に責められて心中を吐露するまで、
「そっかー、藤吉ってそう考えていたんだー」という判断がつかない、
もっと言えば、その言葉だって、本心なのかどうかわからず、
物足りなさが残った。
中村勘太郎も、ほとんど大河ドラマの「新撰組!」そのまま。
今回は端役だったから演技のストレートさも鮮やかさが目だったけれど、
「思い込んだら他が見えない」役以外を、いかに深みをもって表現できるようになるか、
今後をじっくり見守りたい。
その意味でいうと、さすがの存在感が市川海老蔵だ。
ちょい役の浪人客だが、顔つき、セリフに確かさがある。
5分からそこらの出番でも、1つの人生を感じさせた。
貫禄の坂東三津五郎、居住い美しい市川門之助
腹に一物二物の男を演らせたら並ぶもののない中村橋之助、と
最後はオールスターキャストで場が盛り上がる。
松竹のお膝元、東劇での上映が好評で東京・丸の内ピカデリー1で続映しているが、
それも本日7/25まで
途中休憩ありの3時間半。お時間には余裕をもってお越しください。

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