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七月大歌舞伎・夜の部「夏祭浪花鑑」

「夏祭浪花鑑(なつまつり・なにわかがみ)」は、
中村勘三郎が、勘九郎時代の33年前から
主役の団七役を幾度も演じている。
今回団七を任された海老蔵は、去年こんぴら歌舞伎に続き、
2度目。
徳兵衛役の中村獅堂は初役、
徳兵衛の妻・お辰に扮する勘太郎は、
去年のコクーン歌舞伎に続いて2度目である。
若手三人の中で、
もっとも印象深かったのは、
お辰の勘太郎だ。
お辰は同郷の磯之丞を故郷にお連れしてくれ、と一旦は頼まれる。
夫・徳兵衛の家にもゆかりの人だから光栄だと思ったところを
「人の女房とはいえ美しすぎて、道中間違いを起こさんとも限らない」と
頼まれごとを反故にされそうになり、
自ら頬に焼きごてをあて、
「見た目の美しさ」を捨て去る。
私はコクーン歌舞伎の「夏祭…」は直接見ていないが、
NY公演、ヨーロッパ公演も含め報じられたドキュメンタリー番組は見た。
その中で、
勘三郎が勘太郎・七之助にダブルキャストでお辰役を配し、
勘太郎に稽古をつけるシーンが映った。
肩を震わせ泣く場面、
「もっと」「もっと」「それじゃ客にわかんないんだよ!」と
声を荒立て勘三郎は指摘する。
内なる感情を大切にしようと振舞う勘太郎に対し、
形から入れという勘三郎の叱咤が続いた。
その成果といおうか、勘太郎のお辰は、
時に客から笑い声が起きるほど、所作がはっきりしている。
あざといくらいだ。
三味線の音とともに体が動くような、
「形」の芸である。
しかし、悪くない。
表情の変化も、セリフの切れも、
すべて「見える」ことで、
お辰の悔しさも、苦しさも、誇りも気風のよさも、
観客はすべてを共有することができる。
お辰といっしょに笑い、泣き、
頬にあてた焼きごての熱さを感じられる。
まだまだ勘三郎のまねごとの域を出ていないし、
「笑い」を誘ってしまったのは本意ではないだろうけれど、
それでも非常に魅力的な、
見ごたえのあるお辰だった。
そこには「歌舞伎の型」が存在した。
同じく「型」の美しさが魅力の
一幕・団七と徳兵衛が往来で派手な喧嘩をやらかす場面。
二人でさまざまに腕を組み合い、見得を切る。
だが、そこに迫力が感じられない。
まだまだ段取り芝居なのだ。
ここで手を組んで、足をからめて、後ろへまわって、と
いくら「型」だからといっても
「喧嘩」というテーマがどこかに吹っ飛んでしまい、
スピード感やら緊迫感がするりと抜け落ちてしまっている。
特に獅堂は、踏ん張りがきかない。
鍛錬不足である。
海老蔵と二人組み合うと、
明らかにふくらはぎのあたりの筋肉のつき方や足の締まりが違う。
二人の力にギリギリの拮抗が生れないので、
見ていて手に汗握れないのだろう。
その点では、
二度目の海老蔵のほうが一段突き抜けていた。
舞台上の素早い動きは、
大詰め、長町裏での舅殺しの場面で大いに映える。
立ち回りには、やはり一幕と同じく、
呼吸を合わせているところが見えてしまい冗長な部分もあるが、
殺してしまった後、
近づいてくる祭りの衆に気取られないよう、
井戸の水で刀を洗ったり、返り血を浴びた自分も水をかぶったり、
震える手で刀を鞘に納めたりする場面では
顔の表情も大きく、非常に緊迫感が伝わってきた。
ただ、
なぜあそこまで舅・義平次をなぶり殺しにしなくてはならないかが
わかりにくい。
この話、ひらたくいえば、
やくざな男たちの義の話、という感じなので、
根っからの善人はいないと考えてよい。
みんなスネに傷があり、
すぐに悶着起こしてはしょっぴかれているような輩だ。
最初の場面にしてから団七の「ご赦免」、つまり
「おつとめご苦労さまでした」から始まるのである。
そんなヤクザな団七が、これまた小悪人の義平次を、
懐に小石を抱いて「30両」と偽りだます。
義平次、団七が体を張って面倒をみようという磯之丞の
想いものである芸者の琴浦をかどわかし金にかえようとするのを止める、
といっても、
30両くれようといっておいて、それが石では、
義平次怒って当たり前である。
殺してしまってから、
「悪い親でも親は親」と泣いて拝む団七だけれども、
私から見れば、
どっちがワルだ?といいたい。
そして、
ワルならもっと、ちゃんとしたワルであってほしいし、
たとえ外から見れば悪事であっても、
自分の中では一本筋が通っていてほしい。
団七、心がカッコよく見えないのだ。
「一寸の虫にも五分の魂」で、
ヤクザの世界にも義はあり、道はある。
それを感じさてくれれば、
親を殺そうが舅を泥のなかに蹴落とそうが、
最後に流す涙に共感して
観客は団七とともに最後拝んで泣けるはず。
もっと団七に感情移入させてほしかった。
夜の部「天守物語」の図書之助では
無表情の中に七色の感情を表した海老蔵。
あの緻密さが、団七の造形にもほしかった。
次回に期待。
同じく獅堂も、
「天守物語」での朱の盤坊の演技には安定感があり、
徳兵衛のときにかすれていた声もよく伸びていた。
複雑な心理描写を必要とする役になっても
同様の大きさが無理なく出てくれば、
獅堂は魅力的な役者になると思う。
「五重塔」の源太といい「夏祭…」の徳兵衛といい、
舞台に登場したときは輝いて見えるのに、
その後のあと1歩が足りないように見えた。
しかし、
今回は初役である。
重要な役を、まずは任されたこと、挑戦できたことに意義があろう。
これからである。
セリフまわりにも体作りにも、
一層精進してほしい。

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