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「New Pieces」@赤坂ACTシアター

Kバレエはここのところ、
古典バレエの大作を中心にしているので、
コンテンポラリーの、それも新作をやる、というのは
かなり挑戦的な試みと言えましょう。
中村恩恵、服部有吉、長島裕輔が振付けた3作品ですが、
イリ・ブペニチェクの動きを見た直後の私の感想としては、
コンテンポラリーの「作品」として満足のいくものではありませんでした。
以前も書いたことがありますが、
クラシックバレエとコンテンポラリーバレエとは、
体を動かす文法が違うと私は思っています。
衣裳や、音楽や、テーマや、そういうものをどんなに「現代的」にしても、
体の動きがクラシックバレエである限り、
本当の意味のコンテンポラリーにはなりえない、というのが
私の持論であります。
その意味で、刺激的な振付は見ることができませんでした。
特に、長島氏の作品「Evolve」は、
「作品」というより「練習曲」、バレエというより体操的な印象で、
曲も振付も平坦すぎて舞台向けではありませんでした。
気が遠くなるような繰り返しの中で、
自分らしさやイニシアチブを持って踊っていたのは、
橋本直樹だったと思います。
服部有吉の「戦慄」は、
シューベルトの「死と乙女」という曲を使っていますが、
この「死と乙女」というタイトルそのままのようなストーリーでした。
「乙女」役のSHOKOは実力をあますところなく発揮していたにも拘らず、
作品として奥行きが感じられなかったのは残念です。
顔の見えない群衆の囁きに揺れ動く乙女、というところは、
韓国の女優がインターネットの書き込みを苦に自殺した事件などを
ほうふつとさせたりもしましたが、
「死」が「乙女」を襲う、というテーマの押し出しがあまりにストレートで、
どこにでもあるようなお話に感じられ、
その分先が見えてしまい陳腐に思えてしまうのでした。
死神役(だと思う)の宮尾俊太郎は、
動きの少ない中、「手」や「指」の表情にめりはりがあって、
私は今まで彼のことをあまり買っていなかったのだけれど、
掌だけであれだけの表現ができるというのは素晴らしい、と
改めて感服しました。
CM、映画、テレビドラマ、と畑違いの場で努力したことが
バレエの世界でも実りつつあるようです。
もう1人のメインダンサー、遅沢佑介は、
体の動きに切れがあるものの、表現力がいま一つで、
SHOKOが登場するまでの時間、
自分ひとりで作品の世界観を背負い、観客をひきつけるだけのオーラに欠けました。
また、衣裳ですが、
忍者かっていうくらいの黒ずくめで体の線も手足の線も見えないというのは、
バレエのステージでは「観る」喜びの半分以上を奪われている感じがしました。
観客は、作品と同時にダンサーの肉体の動きそのものも楽しみなのです。
もっとタイトなウエアでもテーマ性を失いはしなかったのではないでしょうか。
照明も極端に暗かったので、
私は前から2列目ですからそれでもよかったのですけれど、
後のほうの人は、ともすれば何が行われているかも判然としなかったのでは?
創る人、踊る人の自己満足に終わらないステージを望みます。
中村恩恵が振付、中村自身と熊川哲也が踊った「Les Fleurs Noirs」は
序盤、
切れのある熊川の動きと曲に対する解釈のクリアさにおいて、
それまでの2作品とは一線を画す「コンテンポラリー」だと感じたものの、
今度は服部氏の振付とは逆に、
どこが「Les Fluers Noirs」つまりボードレールの「悪の華」なのか、
テーマがちっとも浮かび上がってこない点で
凡庸な作品となってしまったように思います。
そこに「憂い」はあっても「悪」はなかった。
いつ終わったかも判然としないのも、
単に「終わりがあいまい」なだけだなく、
観客に満足感を与えていない証拠のような気がします。
「満足」という意味でいえば、
テープ使用の音楽で生オケや生ピアノではないし、
舞台装置もほとんどなく(ただし服部氏の作品はシンプルだけど島次郎氏の作品)
衣裳も古典のようなお金のかけ方は必要なく、
それで赤坂ACTシアターで全席14000円という売り方は、どうなんだろう?
先ほども言いましたが、
前の方ならいざ知らず、1階や2階の最後列に14000円払って、
満足したかしら…。
何もかも引き合いに出して申し訳ないけど、
エトワール・ガラはオペラ座のエトワール(あるいはそれ級の人)しか出てなくて、
それでS席15000円。B席は8000円です。
もちろん、会場としてのキャパも違いますけどね。
私は前から4番目の席でA席11000円(前の方は足先が見えないためA席)でした。
いっぱいにつまった客席を見上げながら、
私は、いつもKバレエを応援している固定ファンが多いのだからこそ、
こうした意欲的な試みは少し金額を抑えてもいいのではないかと思いました。
以前も書きましたが、
Kバレエは5月6月の「白鳥の湖」にご縁がなく、
本当に久々の舞台でしたが、
熊川哲也の健在ぶりを見られて、とても安心しました。
彼はやっぱり超一流のダンサーなんだ、と再認識。
だからこそ、
古典であってもコンテンポラリーであっても
彼のよさを十分に引き出す作品に出会い、
また一つ高みを目指して踊っていってほしいと思いました。
帰り際、
ロビーで売っていたKバレエの10月「コッペリア」のチケットを購入。
大好きな東京文化会館の、大好きな5階最前列中央の席を取れました。

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