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「第九」@赤坂ACTシアター

Kバレエの「第九」、行ってまいりました。
東京・赤坂のTBS周辺は、
赤坂sakasと銘打って、このほど再開発の街開きをしています。
地下鉄「赤坂」駅から直結している通路も広く明るく新しくなって、
そうですね、六本木ヒルズと乃木坂ミッドタウンっぽいかな。
ちょっと小ぶりですけどね。
まだ工事している部分もありました。
ACTシアターもその一環でリニューアル。
今までは仮設小屋みたいな感じだったのが、
かなり本格的な建物に。
ただ、危惧していたとおり、
バレエにはちょっと舞台が狭いかなー。
今回はオーケストラも上に上げたのでそのせいもあるかもしれませんが、
それにしても幅がない。
ストレートプレイに向いているのではないかと思いました。
私は2階の最前列席。
2階席の前の方は、かなり舞台に近いし、見やすかったです。
さてさて、肝心の舞台の方は?
うーん、私はけっこう第九はよく聞いているので、
バレエがどうのこうの言う前に、
オーケストラの出来がちょっと…。
難しいとは思うんですよね。
バレエ音楽でも、バレエなしの演奏だと、かなりテンポは早めになる。
つまり、
演奏だけで気持ちよく行こうとしたら、
きっとダンサーがついていけなくなっちゃうんでしょう。
だからなのか何なのか、
すこーし気の抜けた第九なんです。
オケピを使わず、舞台を二階建てにして、舞台奥にオケを入れたからでしょうか。
音響的な問題があるのでしょうか。
とにかく、
音がこもるし、広がりがないんです。
特に第一楽章。
もう少し、重厚さというか、迫力がほしかった。
それは、音楽だけでなく、バレエもそうかな。
ソロの輪島さんも、かなりがんばっていましたが、
やはり舞台が小さいせいか、パフォーマンスがちぢこまって見えました。
男性だけのパフォーマンスなので、
もっともっと力強さというか、重量感がほしかったです。
それに比べて、女性ばかりの第二楽章は、ものすごくよかった。
ブルーの照明で、海からの生命の誕生をイメージしたバレエですが、
音楽も軽快なので、オケも不安なく流れたし、
長田、荒井、東野の三人が非常によかった。
みんなニンフのようというか、
ギリシア神話に出てくる海神の娘・テティスとその姉妹のようというか。
特に、私は長田さんに目が行きました。
音楽のトーンが変わるところを、メリハリつけてきちんと表現していましたね。
優雅な中にもクリアで、ステキでした。
第三楽章は、アダムとイヴをイメージした3組の男女の踊り。
音楽は「アダージオ」で、第二楽章とうって変わってのどかで起伏があまりありません。
それだけに、振付に意外性と工夫がほしいところ。
最初の方は男性3人と女性3人をうまく使って
「シンフォニックバリエーションズ」みたいな感じに仕上がっていましたが、
展開に伸びがなく、印象が薄いまま流れていってしまいました。
演奏にも魂が感じられなかった。
すっごくいい曲のはずなんだけどなー。
第四楽章。
ここの入りは、オケだけです。そこがもう、どーーーして?っていうくらい平板で。
たたみかけるとこでしょ、ここ?
なんか、哀しくなっちゃった。オケの編成かしら。
私、よくわからないけど、人数的が少なめだったりする?
オケを二階に上げちゃったことで、音が届かない?
どこに問題があるのか、誰かおしえて~!!
バレエが入るあたりから、ようやく盛り返す。
熊川も出てくる。
独唱の4人もいい。
オケもエンジンかかってきます。
合唱が入って厚みも増します。
第四楽章の振付には、いろいろ考えさせられました。
熊川はこの楽章を「現代」と位置づけています。
男は隊をなして争い、
女は傷ついた男を助け起こし、
そして神が諍いを鎮めにくる…みたいなストーリー。
そこに「神」のようなものが出てきたことに、ものすごくびっくりしました。
そして、「神」は「未来」を生むのです。
熊川は、「第九」を第一楽章から振付けていったといいます。
一、二、三、とあって、そのモチーフがからみながら四は構成されているので、
この順番に作るしかないのは当然ですが、
その過程は、
彼の足の具合が徐々に、そしてどんどんよくなる過程と重なりあうわけです。
第一楽章の、どこか鬱屈した感じ、
第四楽章の、祝祭的な感じは、
そのまま彼の心理状態を反映しているようにも思えます。
彼が四楽章に「未来」を織り込んだのは、
この先のKバレエへの夢がそうさせたのではないでしょうか。
ケガから復帰しての熊川は、10ヶ月現役から離れていたとは思えない体つきで、
最後の最後に見せる完璧な連続高速ピルエットは、
彼の完全復帰を十分に印象づけました。
絶対にぶれない彼の中心線、手足の先の先まで神経の行き届いたパフォーマンスを見られて
本当に幸せです。
ピルエットに比べると、
やはりジャンプはもう一つか?
もちろん高さも伸びも滞空時間もいうことないんですけど、
着地の足に多少「怖さ」が見られる。
これから回を重ねるたびに、その「怖さ」が剥がれ落ちていくのではないでしょうか。
「第九」を見終わって、
2つのことをかみしめました。
一つは、
熊川の振付は「新しい世界」を創造するものではない、ということ。
彼の文法は、あくまで古典です。
だから、彼が何をどう語ろうと、それはクラシック・バレエの範疇。
そこを突き破って見たことも聞いたこともない世界を構築するモダン・バレエとは
文法が違うのです。
それはいけないことでも、悪いことでもない。
彼が生み出すバレエは、心地よい予定調和の中にある、ということです。
もう一つは、
たとえそうだったとしても、
「第九」を振付けたことには意義があったな、ということ。
第二楽章の美しさは、きっとこの楽章だけをとって踊っても十分楽しめるし、
第四楽章を見る時、
音楽によってインスパイアされた一つの物語がそこに生れたことを実感します。
これから第九を聴くときには、
もうあのバレエを思い出さずにはいられないくなるのですから、
その影響力たるや、ものすごいものです。
願わくは、
とにかくもっといい演奏で。
私の願いはただそれだけです!!!

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