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Kバレエの「白鳥の湖」

10月に東京文化会館で、熊川/荒井の回、
11月にオーチャードホールで、
宮尾/アナニアシヴィリの回を観ました。
10月に観たとき、
とにかく二幕のホワイトバレエの素晴らしさに、惚れ惚れしました。
熊川・荒井ペアの二幕アダージオは、
荒井オデットが王子にすべてを委ねるまでの表現が素晴らしく、
孤独な王女の心がほどけていく過程固唾を飲んで見守りました。
この時、熊川さんが身をよじるようにして荒井さんの動きをサポートしているのを見て、
私は今までにない感動を覚えてしまった。
舞台の真ん中で、無意識にも常に自分が一番光り輝くように動いていた彼が、
オデットを輝かせるために、こんなに相手役に奉仕している、
その姿に。
すべてのバレエの中でも、「白鳥の湖」は別格だという熊川哲也が
その「白鳥の湖」の白眉であるオデットとのアダージオに賭けるすべてを、
私はその身のよじりに感じたのでした。
その感慨は、さらに続きます。
11月、白鳥たちの動きにはいよいよ磨きがかかり、
これ以上ないというほどの最強最高のホワイトバレエを見せてもらえたという気がしました。
そして彼は、バレエになった…。
熊川哲也の登場しない舞台を見ながら、
私は彼のスピリットが寸分たがわず具現化されていることを
ひしひしと感じたのです。
とにかく、すべてのコールドが指先のそよぎまで揃っていた。
この丁寧さ、優雅さは、きっとニーナと稽古をともにした一人ひとりのダンサーたちが
身体に刻みつけたものなのだと思います。
それがKバレエの特徴である音楽の物語性とシンクロして、
パーフェクトな舞台を作り上げていました。
(ここからの分を、誤操作で全部消去してしまい、かなり落胆。
 思い出しつつ、ようやく続きを書きます)
第一部の踊りからして、よく音楽に合っていること。
Kバレエユースの存在も、いい意味での競争を生み出しているのでしょう。
パ・ド・トロワは、特に4日の神戸さん、中村さんが秀逸でしたが、
20日だって私は、涙が出そうになるほど感動しました。
ロットバルトは25日のキャシディが、
フクロウの化身として首を右に左にと小刻みに動かすさまは
ほとんど「義経千本桜・初音旅」で狐忠信の尾上菊五郎が見せるほどの芸域。
バレエダンサーを通り越して、憑依に近い。
遅沢ロットバルトは、さすがにそこまではいかないが、
逆に若いロットバルトの、オデットへの執着を踊りで見せ、こちらも魅力的だった。
ニーナは…もう、そこにいるだけでニーナ。
荒井さんが見せるはかなさとか、女らしさとか、哀れさとか、
そういう繊細な解釈で積み上げたオデットとは違う、
バレリーナとして「そこにある」力強さ。
振付なども、かなり違う。
自分の踊りやすいように、自分が美しく見えるように、
すべてはニーナのために用意された舞台、そんなふうに見えました。
でも、
それが決して嫌味ではないのです。
彼女の踊りをずっと見ていたい、そう思わせる。
たしかに、ニーナは王子を見ていないかもしれないけれど、
バレエには真摯なのです。
バレエの神様に、自らを捧げるような、舞台の神様に正直な、そんなバレエでした。
宮尾さんの王子でびっくりしたのは、
彼は出てきただけで王子だったことです。
相変わらず、彼の長くてしなやかな手指は雄弁。
おっかなびっくり見ていた第三幕のソロも、
この人の「本番力」の強さに感服しました。
「白鳥の湖」は、やっぱりオデットの物語だから、
王子が技術見せつける必要はない。
ジャンプがどれほど高いかよりも、
王子としての振る舞いの一つひとつが堂にいっていました。
1つだけ。
オデットも難しいけれど、オディールも難しいなと実感。
最近、「これぞオディール」というオディールに出会っていません。
圧倒的にのしかかってくるような空気をまとったオディールには、
なかなかお目にかかれないもの。
ニーナも華やかにフェッテを繰り返し、最後のコーダを踊りきったけれど、
そして「素敵」ではあったけれど、
あればオデットでなくてキトリだと言われてもかまわなかったし、
さきほども言ったように、それは「ニーナ」としての輝きだったと思います。
Kバレエは来春、いよいよ「バヤデール」を上演することが決まりました。
ハンドルネームを「ガムザッティ」にするほどこの演目が好きなワタシ。
ブロンズアイドルとして、ソロルとして、
ロイヤルバレエでのキャリアを三段跳びくらいで駆け上がった熊川が
どんな「バヤデール」を仕上げてくれるか、
楽しみで楽しみでしかたがありません。

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