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「スカーレット・ピンパーネル」

東京宝塚劇場で星組公演「スカーレット・ピンパーネル」を観てきました。
星組は、「エル・アルコン」以来です。
「スカーレット・ピンパーネル」とは「紅はこべ」のこと。
1789年にフランス革命が起きた後、
しばらくは穏健派のジロンド党が政権を握りますが、
その後公安委員会による恐怖政治が続きます。
すると、
貴族は「貴族だ」というだけで処刑されるようになる。
捕まえられそうになった有力貴族たちを、
イギリスに亡命させる橋渡しをした一団のトレードマークが「紅はこべ」で、
その頭領は、実はイギリスの青年貴族サー・パーシー(安蘭けい)。
ロベスピエールの片腕として、「紅はこべ」撲滅の陣頭指揮をとるのが、
ショーヴラン(柚希礼音)。
そのショーヴランと、かつては革命を共に闘った女性・マルグリット(遠野あすか)は、
何の因果か今やパーシーの奥方になっていた。
この3人の愛憎を縦糸に、フランス革命の行方を横糸に織りなす
一大歴史冒険活劇が、「紅はこべ」なのです。
もちろん、フィクションです。
書いたのは、ハンガリーの貴族の家に生まれながら国を追われ、
ヨーロッパをめぐりイギリスに来た女流作家バロネス・オルツィ。
バロネス(バロン=男爵を女性形にした)と名乗るだけあって、
どちらかというと革命で追われる貴族に同情的な書き方ですね。
正義への情熱と勇敢な心を胸の奥深くに沈め、
正体がばれないようにわざと軽薄な青年貴族を装うサー・パーシーを
安蘭けいが好演。
余裕しゃくしゃくでショーヴランをおちょくる場面は、
マジメな歴史絵巻なのに、
ほとんど「ベルばらキッズ」のノリ。
フランス全権大使としてイギリス宮廷の舞踏会に出ようというショーブランに
「その喪服みたいな黒い服でいくのかね?
 よかったらボクの服を貸してあげるよ。
 ・・・ものすごーく速く泳げる水着もあるんだ。
 ・・・でも着るのがちょっと大変。3人がかりで30分かかる」
客席、このあたりですでに笑いのさざなみが。
仏頂面したショーヴランが、眉間にシワを寄せながら
「レーザーレイサーは要らない」(客席、笑)
「・・・知ってたか。レーザーレイサー。・・・持ってるの?」
「・・・持ってない!」
「よかったー。ボクは持ってる!」
そばにいるマルグリットに、ショーヴランが
「こんな男のどこがいいんだ!?」(客席、爆笑)
マルグリットも負けずにマジメに、
「・・・予想のつかないところ・・・」(大爆笑)
歌舞伎でも、その時の流行りや事件などをうまく取り入れて
場をなごませたりするけれど、
ここのくだりは本当に笑った。
ショーヴランの柚希礼音が、まったく笑わずに応対するところが、また可笑しい。
紅はこベは老婆とか、ベルギー人のへんちくりんな医師とか、
いろいろ変装するのだが、この変身がまた見事。
安蘭けい、声色や表情、腰の曲げ方に至るまで七色変化だ。
この人、そのうち宝塚を離れて女優になったら、
どんな役でもできそう。
「エル・アルコン」で見せた歯の浮くようなプレイボーイぶりも
あまりにカッコよすぎて参ってしまったが、
今回も、とうてい想像できない芸幅を見せ付けられて、脱帽。
敵役ショーヴランを演じた柚希礼音も非常に輝いていた。
歌に伸びがある。声に感情がこもり、
ショーヴランの微妙な心の揺れが手に取るようにわかる。
「エル・アルコン」からそれほど時をおいているわけでもないのに、
ぐんと飛躍した感がある。
エンディング近く、銀橋中央に1人立ち、
劇中ずっとサー・パーシーが歌っていたメインの曲
「ひとかけらの勇気」を熱唱した時には、
劇場中から沸きあがるような拍手がいつまでも続いた。
星組をこれから背負って立つのは彼(彼女)だ、ということを
そこにいたすべての人が確信した瞬間である。
通常、
宝塚の講演は物語とレビューの二本立てだが、
今回は「スカーレット・ピンパーネル」を二幕に仕立て、レビューはない。
ただスカーレット・ピンパーネルの大きな絵をあしらった大階段を使って、
フィナーレが繰り広げられる。
ロケットダンスも「紅はこべ」にちなんで赤い衣裳。
紳士達も、黒燕尾ではなく、えんじのスーツにサーベルを持って現われる。
そこで光るのは、やはり安蘭けいの歌だ。
劇中では遠野あすかのマルグリットが歌っていた「あなたをみつめると」という歌を、
安蘭けいが男バージョンの歌詞で歌い上げた。
「あなたのこと見つめると 知らない誰かがそこにいる」
「愛した人はいない 突然変わってしまった
 今のあなたは 誰だかわからない」・・・という、
幸せな両想いの日常に、気がつくと入り込んでいる影を感じさせる
とてもせつない歌なのだが、
安蘭が歌うと、「紅はこべの歌」にとどまらず、
誰の胸にも響き、いつかのあの日を思い出させる。
決して声を張り上げるわけではない。
しかし、歌詞はしっかりと届き、その音色の懐の深さに、溶けてしまいそうだ。
宝塚を見ていていつも思うことだが、
美術や衣裳にも妥協というものがない。
サー・パーシーとマルグリットの結婚式の場面など、
衣裳もそうだが、アンサンブルの一人一人の表情やメイクに至るまで、
パーフェクトだったと言っても過言ではない。
美しさとは、こういうものを言うのだな、と納得するほど、
ただただ見惚れるばかりでした。
それにしても・・・。
「レベッカ」を観たときも思ったんですが、
「イギリス人」って「変わり者」の代名詞なの?
新婚の奥さんほったらかしにして仲間で狩とかスポーツをする、とか、
ある意味自分とは関係ないフランスを助けようと思っちゃう、とか、
けっこう恋に臆病で、プライド高すぎて本心を明かさない、とか、
ものすごーく、「ヘンなヤツ」っていう認識がある感じがする・・・。

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