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「それぞれのコンサート」@東京フォーラムC

ホリプロの50周年記念で、
市村正親と鹿賀丈史が「それぞれのコンサート」をやっている。
私は3/5夜に市村バージョン、
3/6夜に鹿賀バージョンを、観に行った。
二日間で、ミュージカルというミュージカルを
すべて見尽くしたというくらいの満足感がある。
パンフレットで小藤田千栄子が書いているが、
この二人は
「日本のミュージカルの、ほとんどの作品に関わって」いて、
「観劇して、良かったわあと思った作品には、
この二人のうちのどちらかが出ていたこと」になり、それは
「かなりスゴイこと」なのである。
約二時間休憩なしのノンストップステージを、
市村バージョンはほとんど歌いっぱなし、踊りっぱなし。
一方鹿賀バージョンは、
自分の演劇人生を振り返るトークがあって、あとは歌、歌、歌。
同じセットを使い、同じバンド(名前は違う。
「世界でイッちゃんバンド」と「加賀(鹿賀)百万石バンド」)を使いながら、
趣向がいろいろ違って、両方見ると本当に面白い。
オープニングも市村さんはちょっと「お茶目」な仕立てであくまで演劇的。
対して鹿賀さんは映画のつくりを意識したものになっている。
前半はジャブ、見せ場は後半、そしてクライマックスは最高潮!
尻上がりにテンション高くなっていく作りは、二人とも同じでした。
このコンサートで本当にありがたいのは
「見逃してしまったあの舞台」を、さわりだけでも見られること!
もう見られないと思っていた二人の四季時代の名舞台はことさらである。
「オペラ座の怪人」の市村ファントム、
「ウエストサイド・ストーリー」の鹿賀トニー、
「イエス・キリスト・スーパースター」の鹿賀キリスト、市村ヘロデ!
特に市村ファントムは、
もうこの世のものとは思われない鬼気迫るものがあって、
「このファントムは世界一だ~!」と確信。
なんせ、仮面もなし、クリスチーヌもなし、最初は幕も閉まっていて声だけ、
話も途中、すでにクリスチーヌがラウルに走った後から始まるのにも拘らず、
一瞬で「オペラ座の怪人」ワールドに引きずり込まれ、
以後最後の最後まで、固唾を呑んでファントムをみつめるのみ。
ファントムの、生涯をかけた愛が砕け散ったあとの憎しみと、
それでも残るクリスチーヌへの思慕と、
やるせない情念がないまぜになり、うなりをあげて地の底から噴出す、
それを素晴らしい歌声と圧倒的な演技力で披露してくれたのだ。
最高でした。
鹿賀トニーの「トゥナイト」もよかった~。
日本人の歌う「トゥナイト」でこんなに感動したのは初めて。
かれのジーザスもよかった。
もうあの声は出ないんじゃないか、と不安があったのだけど、
そんな不安、ぜーんぶ吹き飛ばしてくれました。
鹿賀さんはとても調子がよくて、
本番ではイマイチだった「シラノ」も完璧だったし、
「ペテン師と詐欺師」も、行かなかったのすごく後悔したし、
美空ひばりの「みだれ髪」も抜群!
ひばりの歌をこんなにうまく歌った男の人を、私は知らない。
「ジキル&ハイド」はやっぱり彼しかいない、と思わせるだけのものがあった。
ジキルからハイドへ人格が変わるところは圧巻。
「彼しかいない」でいえば、
市村さんのエンジニア(「ミス・サイゴン」)は、
やっぱり市村さんしかいないわけで。
「インチキは~♪、こりごりだ~♪」のところのチェンジオブペースは、
ストレートプレイで培ったセリフ術があって初めて出る味だろう。
二人がからむ
鹿賀バルジャンと市村ジャベールの「対決」も迫力があった。
久しぶりに見た井上モーツァルトと市村レオポルド(父親)もうれしかったし。
二夜ともすごく楽しめました。
興味深かったのは、
ゲストの井上芳雄(市村バージョン)、田代万里生(鹿賀バージョン)ともに
ジーザスのユダ(「彼らの心は天国に」)を歌ったこと。
最初に聞いたのは井上くんのユダ。
一生懸命歌っていたけど、歌いこなせていなかったというか、
ちょっと空回りしていた感じがした。
どちらかというと、彼はジーザス役が似合うと思っていたので、
やっぱりユダじゃないな、とそこは確信。
次は田代くんのユダ。
あの澄み切った声は、井上くん以上にジーザス向きじゃない?
その思いは、最初の一声で吹き飛んだ。
彼はちゃんとこの歌を、ユダの気持ちを、自分のものにしていた。
うーん、
井上ジーザスvs田代ユダ、見てみたい。
私は観劇の機会がないけれど、武田真治がゲストのときもこの歌は歌う。
きっと三人三様で、聞き比べも楽しいだろうな。
鹿賀さんのトニーにからんだ香寿たつきさんのマリーも素敵でした。
この「それぞれのコンサート」、まだまだ続きます。
東京フォーラムCホールでは、3/14まで、
大阪・梅田芸術劇場では3/22~24。
迷っている方、絶対行ってください。
どちらか一つだけいくつもりの方、
できればもう一つのバージョンも。
還暦にしてダンスの鬼、
コーラスラインで一番高く美しく脚を上げる市村さんの
ヘロデ、テヴィエ、エンジニア、ファントムなどを堪能するもよし、
四季をなぜやめたか、どうやって舞台に戻ったか、など
ファンの前で胸襟を開き、すべてをさらけ出しつつ、
最高の歌声で「やっぱりタケシは凄い!」と相棒のイッチャンにさえ思わせちゃう
鹿賀さんの底力に酔うもよし。
もう、ホリプロさんありがとう!の大ヒット企画です。
今だからできて、
今しかできない。
これから行く人、楽しみにしてくださいね~。

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