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「モーツァルト!」(山崎・涼風楽日)@帝国劇場

奇跡のチケットゲットで行ってまいりました!
うーーーん、山崎ヴォルフ、進化した~!
今まで見た中で、1幕の表情や掛け合いが一番活き活きしていてよかった。
でも
もっとも感動したのは、やっぱり2幕の、
「星から降る金」の直後。
涼風男爵夫人を凝視していたヴォルフが、
少し落ち着いてくる。
コンスタンツェが「気分は落ち着いた?」というと、
ヴォルフは「大人は自分の足で歩かなくてはならない」と言って、
外に出ていく。
このとき、
山崎ヴォルフは、見事に「大人」になっている。
それまでの、甘えが残るヴォルフとは、まったく違う表情を見せるのだ。
本当に、「険しい道を行く」と決めて、
だからこそ、「待って」というコンスを振り切って、街に出て行く。
さっき、自分の首を絞めてきたアマデを連れて。
自分の才能とは手を切らず、
人並みの「しあわせ」を求めることを封じて。
そのときの逡巡が、
階段でしばし立ち止まる背中に現れていた。
ここが非常にシャープに描かれていたがために、
その後、「魔笛」作曲のために別荘にこもっていたヴォルフが
非常に魅力的だ。
同じシカネーダーやその仲間にいじくられても、
対応が至極「大人」で、流されることがない。
だからこそ、
まだ「子ども」で、ヴォルフにかまってもらいたく、
浮気さえ疑ってだだをこねるコンスタンツェに
ヴォルフは「とにかく今は作曲が先だ!」と大声を張り上げていらだつ。
出て行ってしまったコンスを追いかけたい気持ちを抑えたからこそ、
その後のピアノの「バーン!」があるわけで、
だからこそその後に、いい作曲ができるわけで、
そういう流れが一気につながっていった。
「魔笛」で成功して、アマデにとられそうになった垂れ幕を、
大事に大事にしげしげとみつめる仕草も、
最初のころは、魂の赴くままにその「垂れ幕」から離れがたかったのが、
楽日には一つの「意味」を見つけた感じです。
お父さんを亡くした後の、歌もよかった。
最初は「死」に対する敬虔な気持ちから、賛美歌風に、
そこに、父の教えに対する敬愛があふれ出る。
しかしその後、今度は愛する父を奪った「死」そして
「残酷な人生」に対する憎悪がほとばしる。
歌詞をとても大事にして、フレーズごとの歌い分けができるのは
本当にすごいと思う。
ラストも、
その前はすさまじい形相でレクイエム作曲に集中し、
すべてのエネルギーが使い尽くされて息も絶え絶えなのに、
アマデから白い羽根ペンを受け取ったときの
「♪メジャーとマイナー♪」の歌声の伸びやかさよ!
3回も観てしまった山崎ヴォルフ、
3回観られてよかった。
母が死んで、父が死んで、姉に憎まれて、妻にも去られて、
最後に、アマデとも決別して、
ほんとうに独り、ほんとうの孤独だけを抱えてこそ
芸術家なのだ、ということを
おしえてくれるお芝居でした。
当夜楽を迎える涼風さんと山崎くんはご挨拶がありました。
山崎くんは、とても大人なコメントで、
まだまだこれから大阪、金沢と続くのだという自覚に溢れていました。
初演を見て、いつか自分もヴォルフをやりたい、と思ったこと、
今まで味わったことのない不安や恐怖心と闘いながら
それでも今までにない歓びもたくさん感じて
無事千秋楽を迎えられたことがうれしい、と言っていました。
そして
ヴォルフという役を魂こめて創り上げてきた
井上さんと中川さんに感謝する、というコメントが
とても感動的でした。
ステキなヴォルフを、本当にありがとうございました!
大阪や金沢で待っている人がうらやましいです。

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