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「欲望という名の電車」@PARCO劇場

松尾スズキが演出、
秋山菜津子がブランチ、
池内博之がスタンリー。
これは見なくては!と意気込んで行きました。
今回、
私の収穫はオクイシュージのミッチ。
すごくよかった。
今まで、ミッチっていうのは、スタンリーの仲間で、
つまりスタンリーみたいな男の一人っていうくくりだった。
単に、
「そのへん」にいないブランチの魅力にほだされた気弱な男、
スタンリーに比べたら、マジメでやさしい男、
そんなくらいにしにしか思っていなかったのだけど、
オクイのミッチは、非常に繊細で、
「繊細同士」「過去に恋人を亡くした同士」「文学好き同士」という
さまざまな共通点をブランチに見出して、
「だから好きになった」のわくわく感を醸し、秀逸。
それで最後の最後、スタンンリーに「なにもかもお前のせいだ!」と叫ぶ、
彼の哀しさがとってもよくわかるのだ。
世間体と愛情とのはざまで揺れまくる小心者の男の悲哀が、ズキンズキン痛かった。
それに対するスタンリーは…。
ちょっと深みがなかったかな。
もともと、深みのある役じゃないっていえばそうだけど。
でもスタンリーは、
ブランチに悪態つきながらつかれながら、本当は「惹かれてる」し、
ブランチにとってもその野生が「魅力的」じゃなければ、
最後の「最初からこうなる運命だった」が説得力を欠く。
序盤にちょっとセリフで「ちくしょうステラの姉でなければ」みたいなこと言うけど、
スタンリーは基本的に最初から最後までステラ命。
ステラには暴力振るうけどステラが好き。これはわかる。
でもブランチに悪態つきながら、ほんとは惹かれてる、これはわからなかった。
心の底からやっかい者扱いしているとしか見えなかったよ。
だから、
最後がちょっと唐突に感じた。
それに、致命的だったのが、エロさがなかったところ。
スタンリーって、エロくないとさ~。
ステラとはかなりイチャイチャしたけど、
それと「エロさ」とはちょっと違う。
汗ばんで、半裸で、が多かったけど、エロくなかった。
ブランチがやってきたことで、
スタンリーには何か変化がなくちゃいけなかったのに、
最初のボウリングから最後のポーカーまで、なーんにも変わってないの。
そこがいただけなかった。物足りなかった。
それと、
コンプレックスの塊みたいなところのはけ口が、ちょっと違った感じがした。
「平板」という意味では、
ブランチの秋山もステラの鈴木砂羽もそうだったから、
俳優の力というより、演出のせいなのかもしれない。
ステラはなぜ、大農園の実家を捨てて粗暴で貧しい男のものに走ったのか。
そこがまーーったく匂ってこない。
苦労した姉ブランチが大好きで、
その一方、貧しくても叩かれてもスタンリーのことも好きで。
じゃ、たった2間でカーテンの仕切りしかない家に姉が転がり込むっていう、
その「居心地の悪さ」はどうなるの?
ステラ、「私、好きな人二人に囲まれて、シアワセ」みたいな感じで。
近親憎悪のような、それでいて切って捨てられない血縁というものの不可思議さと残酷さを
鈴木はまったくまとわないステラを演じた。
それは、「途中まで」ならよかったのだけれど。
一度も姉妹の、これまでの人生をすべて賭けたような本音の対決がなく、
あるときは妹が姉をよしよし、
あるときは姉が妹をよしよし、と
それだけで終わってしまった感があり、物足りない。
ブランチも、
ただの浪費癖のアル中女にしか見えないし、
たしかに美しいんだけれど、品がなく、常に男に媚びを売ってる感じ。
それだと
「国語の教師のオールドミス」と「娼婦」とのギャップが出ない。
ま、ひとことで言って、美しすぎちゃった、のかもしれないけどね。
私にとって、
やっぱりブランチは大竹しのぶで、
ステラは寺島しのぶだな。
スタンリーは堤真一で、この3人のバランスは素晴らしかった。
それまで、どんな「欲望…」を見ても、ブランチのことが理解できなかったけど、
大竹しのぶの舞台で、目からウロコ的にすっと納得できたのだ。
大竹ブランチは、
「あっち」と「こっち」を行き来するような人格障害を瞬時に垣間見せて、
そこまでいっぱいいっぱいになってしまった小鳥のようなか弱さも見せて、
そうかと思えば、蓮っ葉だったり男勝りだったりするしぐさも入れて、
ときには純粋無垢な深窓の令嬢でもあって、
なるほど、だからブランチはここまで病んでいるのに愛されるのだな、と
哀れさとともに共感を呼び起こす女性だった。
寺島ステラも、
「きっと何かが起こる」を予感しながらも、それでも姉を引き取らざるを得ない、
その自己矛盾を抱えながら生きる「普通」の神経を持った女性を好演した。
ステラがブランチの「病院行き」を決意するとき、
鈴木だと「よくわからないけど、これしかない」で、やっかい払い「しちゃった」感。
寺島だと「よくよく考えて、これしかない」で、自分が鬼と言われようと、姉を思う決断。
姉を思いつつも、絶対に姉を許さない。
許さないけど、姉のために祈る。そんなステラのこれからが見えた。
でも鈴木ステラは、
「えーん、えーん、お姉さんが行っちゃった」
「大丈夫だよ、お前のせいじゃないよ」
「そお? そうだよね」
「ぜーんぶ忘れて楽しく暮らそうよ」みたいな未来。
そんな違いが見えるのだ。
きっと、それが松尾さんの狙いでもあっただろう。
私の好みでなかっただけだと思う。

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