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「グリークス」(第一部)


「グリークス」は、エウリピデス、ソフォクレス、アイスキュロスの三大ギリシア悲劇作家の作品と、
ホメロスの「イリアス」から併せて10作品を、同時代を描く一つの物語としてまとめあげた、
壮大すぎる戯曲です。
「イリアス」「トロイの女たち」「エレクトラ」「オレステス」など、
ギリシャ演劇の名作を土台にしたこの作品を、
日本では蜷川幸雄が演出・上演しました(2000年9月)。
三部構成の超大作 !
1日で全三部を9時間かけて一挙に上演するのと、
3日で三時間ずつ上演するのと、2通りがありました。
私は昼間3日間シアターコクーンに通い詰めた。
9時間ではなく、幕開きから終わりまで通算51時間、
グリークスの世界にずっと浸っていられた幸せ。
もう、ユメもウツツも溶けて混じって…。
平幹二郎のアガメムノン、その妻クリュタイムネストラに白石加代子、
トロイの王妃ヘカペは渡辺美佐子。
この3人が舞台に立つと、そこは最高の演劇空間。
「蜷川だから」観に行った舞台でしたが、
板の上では役者の力こそがすべて、ということを思い知りました。
二人の愛娘イピゲネイアを生贄にするのを何とかやめてくれ、
と涙で懇願する白石加代子の抑えたセリフを聞きながら、
私はとめどもなく流れる涙を拭うのも忘れ、ただ泣き続けた。
平幹二郎が、「その落とし穴の名前は、必然」と静かに語るとき、
スパルタの王、ギリシア軍の総帥として、どうすることもできない立場にたたされた父親の嘆きが、
胸を深くえぐった。
これを観るまで
イリアス
は読んでいなかったんだけど、
アキレウスとトロイの老王、つまり両軍のリーダー同士が戦争のさなかに会うというところに、
「こんなのありえない! きっと演劇ならではのシーンだろう」と思い、
確かめるために読んだところ、
これがホメロスのほうにもきっちりあったから二度びっくり!
そして、「イリアス」全編のエネルギーにもヤラレテしまいました。
この物語こそ、映画の源だと思った。
まだ「映像」などない時代。
日本なら琵琶法師が吟ずる「平家物語」のように、
辻で語られる「イリアス」は、人々の想像力を掻きたて、
大勢の涙と感動を誘ったことでしょう。
この「イリアス」はブラッド・ピット主演の映画「トロイ」の原作本でもあります。
「トロイ」については、明日書きますね。
*2006年7月9日のMixi日記をもとに書き直しました。

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