映画・演劇・本・テレビ、なんでも感動、なんでもレビュー!

  1. 舞台
  2. 32 view

「十二夜」

シェイクスピアの喜劇です。
蜷川幸雄が彩の国シェイクスピアシリーズを彩の国さいたま芸術劇場で始めた1998年、
大沢たかおと佐藤藍子による「ロミオとジュリエット」に続く第2作として登場しました。
2004年にDVD化されたものを最近観ましたが、
非常に面白かったです。
お話は船が難破して別々に助かった双子の兄妹が再会するまでを、
男装して生きる妹ヴァイオラ(男性名・シザーリオ)を中心に描きます。
もっとも素晴らしかったのは、
女とは知らずシザーリオに恋してしまうオリヴィアを演じた宮本裕子。
抑制のきいた、しかし通りのよい声で、セリフは明瞭、表現は鮮やか。
気高さも美しさもかわいらしさも、すべてを示してさすがです。
(彼女は「グリークス」のイピゲネイアでも好演しています)
私は蜷川シェイクスピアはずい分見ているのですが、悲劇がほとんどです。
もしこの「十二夜」を98年に観ていたら、
また違う観劇のしかたをしていたのではないかと思いました。
それというのも、
大森博、たかお鷹、木場勝己による「三バカ」の掛け合いがあまりに見事だったから。
平安時代の「麻呂」みたいな衣裳と白塗り化粧、そして鉄漿(おはぐろ)という出で立ちで、
この三人はシェイクスピアの猥雑さや、権力に対する揶揄を、
本当に自然体で披露してくれている。
松岡和子の訳もいいんです。
シェイクスピアはビクトリア朝の戯曲で、
当時の修辞法により、日本でいうダジャレというか、掛けことばみたいなのがたくさん出てくる。
そういう英語のニュアンスを、きちんと日本のコトバ遊びに移し換えて、
そのやりとりを楽しめるようになっています。
三人は、動き軽やかにして歌も歌い、
時にギターやサックス、太鼓もたたいて多種多芸。
舞台芸人とは、こういうサービス精神が大切なんだなー、と改めて思いました。
美術の素晴らしさは、
こうしたバカ殿風「麻呂」の衣裳やメイクだけではありません。
舞台があちこちの城や海岸などに飛ぶのですが、
カーペットの色一つで、この話は今どこで起きているか、すぐに観客にわかるのです。
そうした大道具小道具の転換も、暗転ばかりを多用せず、
出演者が掃除する設定にしたりしてうまく片付けています。
四角い舞台の淵に立てられた無数のロウソクの火を、
道化が歌を歌いながら一つひとつ消していくエンディングなど、
あちこちに演出が光ります。
取り違えのドタバタストーリーもわかりやすく、
すんなりシェイクスピアの世界に入っていける秀作。
「三バカ」の掛け合いだけでも、楽しい時が過ごせます。
壌晴彦のガチガチ執事の変貌ぶりも、見ものです。
「まだ」の方は、一度お試しを。
「十二夜」は彩の国シェイクスピア・シリーズ NINAGAWA×SHAKESPEARE DVD-BOX【PCBE-51242】=>の中に収録されています。
一緒に入っている「ペリクリーズ」については、明日お話ししますね。

舞台の最近記事

  1. 内博貴主演「シェイクスピア物語」

  2. 演劇界休刊の衝撃

  3. 動画配信を始めました。

  4. 「桜姫〜燃焦旋律隊殺於焼跡」@吉祥寺シアター

  5. 8月・カンゲキのまとめ

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。


Warning: Undefined variable $user_ID in /home/nakanomari/gamzatti.com/public_html/wp-content/themes/zero_tcd055/comments.php on line 145

PAGE TOP