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美輪明宏「戦争と平和 愛のメッセージ」


戦争と平和愛のメッセージ
先月「黒蜥蜴」を観に行ったとき、ロビーで売っていた美輪明宏自筆サイン本として
この「戦争と平和愛のメッセージ」を買いました。
美輪さんは、今、霊がどうのとか、そういう分野で随分人の気持ちをつかんでいるし、
人気もものすごいものがあります。
もう70歳を越しているというのに、そして男性でありながら、
女性として「美しい」(それも「見た目が」)、と評される人はそうそういません。
ただ、
彼が今、誰にもマネできない存在感を放っているその源を、
知らずに好きになっている人も多いように思います。
そういう若い人に、私はこの本を読んでほしいな、と思うのです。
彼は人生の様々な局面で、マイノリティでした。
軍人が幅を利かせている時代に絵だの文学だの、と「男のくせに軟弱な」趣味をもっていたし、
長崎では、原爆に遭っていたり。
「ゲイ」などという言葉が日本になかった時代に、女装していたり化粧していたり。
それでもてはやされたら、今度は男装に戻ったり。
時代を迎合することなく、
自分の価値観・芸術観をしっかりもって、ひるむことなく胸を張って自分らしく生きてきた
その70年をひっさげて、今があります。
たとえ時代の寵児となっても、彼の頭の中は、どこか冴え冴えとしておそろしいくらいです。
70年の間の日本の変わりようをつぶさに体験していることからくるシニカルな分析力。
ただ、
彼はそうしたものをこむずかしく訴えたりはしません。
私たちの感性に訴えかけてくるのです。
この「戦争と平和愛のメッセージ」は、本というよりは美輪さんの「語りかけ」です。
やさしく、静かに、でもしっかりと、
その言葉は響きます。
「戦争とは、あなたの愛する人が死ぬということです」
ここから始まる、美輪さんのお話。
自分が経験した戦争の時代の現実、
戦後の日本が選んだ道、
そしてこれからだって繰り返すかもしれない悪夢を見ないために、
私たちは何を、どのようにみつめていけばいいのか。
こぢんまりした本ですが、
立派な政治家や評論家が話すレベルのことが、とてもわかりやすく書いてあります。
心に響きます。
もしどこかでこの本と出会ったら、とにかく1ページ読んでみてください。
社会を見る目が、ちょっと変わるかもしれません。

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