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「夜の上海」

仕事で訪れた上海。
夜の街で「迷子」になったメイクアップアーティストの水島(本木雅弘)が、
ホテルにたどり着くまでの長い長い一夜を
カレを探す人々や、
カレを跳ね飛ばしてしまったタクシーの女運転手・リンシー(ヴィッキー・チャオ)など
それぞれの恋模様を織り交ぜながら描いたのが、
夜の上海」。
原作は同名のコミックス(日本)、
監督は、中国のチャン・イーバイ。
モックンが出ているということもあるのか、
一時期のトレンディ・ドラマの空気感で突っ走る110分。
「上海」という街のたたずまいが、すでにトレンディ、ということか。
考えてみれば、
今、このときが中国バブルなのかなー、などと思わずにはいられない。
そんなバブルから取り残され、必死で働くリンシー。
修理工の幼馴染ドン・ドン(ディラン・クォ)に会いたいばかりに車をガンガンぶつけまくる。
そのドン・ドンが身につける白のタキシードは、まさにバブルの匂い。
修理工とタキシード。
夜の上海の裏道の一角に、そこだけ光り輝くブライダルショップのウィンドウ。
この映画は、上海の二つの顔を実感する物語でもある。
人間関係や仕事に疲れた水島が、
ちょっとしたハプニングにでくわすとがぜんシャープになって、
子どものような瞳の輝きを取り戻すそのギャップをモックンがうまく表現している。
しかし、
「おまかせ男」の水島が「仕切り女」の美帆(西田尚美)を面倒に思い始め、
美帆もそんな水島より、言い寄ってくる男(塚本高史)の方に本音でぶつかっていける、という
あまりにもわかりやすい図式なだけに、
もっともっと奥行きの深い演技が必要だったのでは?
脚本が監督も含め、日本人、中国人4人というのも、ちょっと気になる。
場面ごとにトーンがまったく違うのだ。
リンシーの、不安でいっぱいいっぱいになりながら、
毎日を生きて、生きて、生き抜くそのバイタリティだけが、
突出して胸に迫る。
ヴィッキーは、
セリフなどないシーンでも、リンシーの人生をまるごと演じていた。
西田、塚本の心の動きがもっと繊細に描かれていれば、
また違った味わいになったのではないかと残念。
竹中直人を使った「アソビ」は、まったく必要なかったと思う。
観た直後より、後になって胸がチリチリする映画だ。
いろいろ物足りないところはあるのだが、
気がつくとこの映画のことを考えている。

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