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「ホワイトアウト」


 【中古】【DVD】ホワイトアウト<初回限定2枚組>邦画
名作「ホワイトアウト」。
何度観ても、緊迫感が衰えることがない。
織田裕二は「危機一髪」を何度もクリアするけれど、
決して「笑っちゃう」感覚は生まれない。
一緒に死線を越えて、一緒に命拾いして、ほっとしてガックリ疲れる感じ。
それはディテールにリアリティがあるからだろう。
放水管の中を、冬の冷たい水に押し流されて脱出するなど、
到底ありえないと思いながらも、
川岸で意識が戻った途端、おもむろに背負ってきた書類を出し、
それに火をつけて暖をとる。
何重にもビニールを巻きつけて、水に濡らさないよう細心の注意を払っていた。
生きるか死ぬかの状況であったにしても、
二人、三人、と人を殺してしまった重みを、
後になって噛み締めるように報告する姿も忘れがたい。
松嶋奈々子が思わず銃を発砲しようとしても、弾が出ないのも
素人が銃を初めて銃を手に取ったときはどうなるか、が描かれている。
とともに、重要な伏線となっているところに脚本の妙が。
この「ホワイトアウト」は2000年大ヒットを記録し、
人気だけでなく評価も高かったので、
織田は自信満々で2001年の日本アカデミー賞の授賞式に臨んだ。
「こういう映画が賞をとらなくてはいけない」
ビッグマウスが笑顔に映えた。
しかし、結果は惨敗。
ほぼすべての賞でノミネートされたにも拘らず、
テロリストのリーダー役、佐藤浩市が助演男優賞に輝いたのみ。
これで最優秀男優賞を、と意気込んでいた織田にとっては、
かなりの計算違いだったはずである。
このとき、織田とともに最優秀男優賞候補にノミネートされていたのは、
受賞した寺尾聡のほか、役所広司、竹中直人、藤原竜也。
「雨あがる」「どら平太」「バトル・ロワイヤル」そして
「長崎ぶらぶら節」というラインナップを見ると
ああ、そういう年だったのね、とうなずける部分も。
竹中直人は「三文役者」。ほかに阪本順治監督の「顔」もあったが、
黒澤明、市川崑、深作欣司、市川森一、そして吉永小百合という
大御所への敬意と、それに連なるベテラン映画人たちが並んだ年という印象が強い。
「ホワイトアウト」の若松節朗監督は、これが映画初監督だ。
織田は「おそらくあの人がとるだろう」という予定調和に
風穴を開けたかった気持ちもあるだろう。
改めて今この映画を観てびっくりしたことがもう一つ。
テロリスト役の一人として、
松嶋奈々子に襲い掛かる長髪の男は、なんと橋本さとしでした。
10年の歳月で、人はたくさんのことを学び、
たくさんの道のりに足跡を刻み、
一まわりも二まわり大きくなっていく。
この年、藤原竜也は新人賞も受賞している。

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