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2月・今月のダンス

2月に観たダンスは以下の3本。
・「ARCHITANZ2月公演」@新国立劇場
・Dazzle「二重ニ裁ク者」@東京芸術劇場プレイハウス
・Diamond★Dogs「Colors」@博品館劇場
ARCHITANZは、
第一の注目がロバート・テューズリーの引退公演で、パートナーは酒井はな。
クラシックの名パ・ド・ドゥ「マノン」と、コンテンポラリーの新作「火の鳥」を踊る。
第二の注目が森山開次の「HAGOROMO」で、ガムラン奏者と能役者との競演だ。
休憩明け後半1発目の「HAGOROMO」が素晴らしく、
前半の低調さを一ぺんに吹き飛ばした。
無類の身体能力で筋肉の内なる高まりを感じさせる森山と、
静と動を自在に行き来する老獪な能役者・津村禮次郎の鋭い気合。
ガムランの調べに乗って
森山はときにバリの神様、ときに月の天女にと変容する。
能楽「羽衣」をしっかりと理解し、反芻し、
その上でオリジナリティあふれる現代的なセンスを輝かせる。
月の光を意識した抑え気味の照明とやさしいガムランの響きのなか、
薄衣のたゆたいはえもいわれぬ幽玄美で胸をとろけさせた。
これほどまでにアグレッシブかつ完成された作品の後では、
どんな舞踊も色褪せて見えるかと思いきや、
テューズリーと酒井との「火の鳥」
「HAGOROMO」に勝るとも劣らぬ気迫と解釈で私を魅了した。
前半の「マノン」に切れがなかった分、
なおさらそう思ったのかもしれない。
特に酒井の表現力は抜群で、
彼女の息の長い活躍の秘密は、
こうした難解な作品でも自分のものにできる読解力の深さだと感じた。
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Dazzleは、
演劇好きの知人から「今最も注目しているグループ」と勧められ、初見。
ストリートダンスをワンランク上の芸術に昇華させるべく、
技を磨き、さまざまな芸術美や哲学・思索をとりこもうとしている。
「二重ノ裁く者」は東京芸術劇場のプレイハウスという、
彼らの舞台としては初の「大劇場」であり、
舞台の広さや奥行を存分に生かし切れていたかというと
まだそこまではいっていなかった。
とはいえ、
人口増加、政治の世襲、
カリスマ政治家にすべてをゆだねて自分で考える権利を放棄する国民、
自分と異なる立場の人々との断絶と無理解、
自分の信念で行動する勇気など、
若者がありったけの真剣さでテーマを組み上げる姿勢に拍手。
結果的にはナチスによるユダヤ人排斥と抹殺をなぞった形になって
私のような「オバサン」には既視感があったが、
こういう過去の事実を知らずに育った若い人たちには衝撃ではなかっただろうか。
浅野忠信のナレーションもなじんでいた。
何より、
ラストのダンスの素晴らしさよ!
彼らから当分目が離せない。
Dazzleのポテンシャルに注目した坂東玉三郎とのコラボも楽しみだ。
森山開次と能楽もそうだが、
日本の誇る伝統芸能が数百年かけて培った精神と技能の極みを
こうした若い才能が吸収していくことが喜ばしい。
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Dazzleの翌日に観たDiamond★Dogsは、
また全然違う感慨を私にもたらした。
博品館劇場に集まった観客は、
新国立劇場とも東京芸術劇場とも
まったく異なるはなやぎをもっていた。
舞台上で繰り広げられるのショーは
いってみればジャニーズの「SHOCK」の大衆劇場版である。
D★Dのメンバー一人ひとりにコアなファンがいて、
御贔屓のメンバーが歌い踊るたびに、彼女たちのテンションがMAXとなる。
「魅せる」ことに長けたD★Dは、そのツボを外さない。
舞台の上だけで結界して自分の芸とひたすら向き合う森山たちとも
挑戦的な目をして自分たちの世界をつきつけようとするDazzleとも違い、
「あなたたちのために、僕たちは歌い、踊るよ」と手をさしのべ、やさしく微笑んでいる。
エンタメの原点はここだ。
アフタートークで眼をきらきらさせながら
「これからやってみたいこと」を話し合うD★Dの面々に大いなるリスペクト。
リーダーの東山義久がかつて「月の光」を踊ったときは、
身も心もとろけた記憶のある私だが、
あのときの東山には、森山の「HAGOROMO」と同じ匂いがした。
今の東山は自分の道を極めるというよりも、
リーダーとして全体をまとめ、
メンバーの気持ちを立てて行こうとする穏やかさがある。
その分、物足りなさも正直感じた。
しかし、
年を重ねればさまざまな道がある。
「若さ」だけが持てる鋭さもあるだろう。
怖いものなし、ということでもある。
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三種三様のダンスを観て、
私は幸せだ。
3月はいよいよKバレエの「ラ・バヤデール」。
ここに、もう一つの幸せを感じられるか、否か。
期待したい。

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