玉三郎と菊之助の「京鹿子娘二人道成寺」に続けて、
「野田版鼠小僧」も見ました。
お話としては、ケチで「カネカネカネ…」とうるさい棺桶屋の三太が
死んだ兄貴の遺産を自分のものにしようとしたのだけれど、計画通りには運ばず、
当時の芝居小屋で大はやりだった鼠小僧の名を借りて窮地を脱したのを機に、
どうせなら棺桶屋より泥棒になってしまおう、というお話。
クライマックスは時の奉行・大岡忠相とのお白洲での一騎打ち、
「お上」のやることを暴きながらも、
「肩書き」を信じて人の真実を見抜けない大衆に潰されていく三太の非力を描きます。
圧巻は正直者の目明し(中村勘太)をたきつける大岡忠相(坂東三津五郎)。
悪賢いヤツの手玉にとられる小市民を鮮烈に描きます。
役者としての力量を見せ付けたのは、今回も中村橋之助。
善良な男の振りをするも、実は腹の底まで腐っている男・与吉役。
同じ一人の人間とは思えないくらい見事な演じ分けでした。
女形としては、七之助がよかった。
きれいどころとしての七之助には定評があるけれど、
喜劇役者としての緩急のつけ方、デフォルメの仕方が最高で、
ああ、お父さん譲りだなー、と思いました。
「京鹿子娘二人道成寺」と続けて見ると、
正攻法と亜流というか、
「鼠小僧」の方は、歌舞伎らしからぬ舞台のように思えました。
これに比べると、「研辰の討たれ」は同じ野田版でもずっと歌舞伎らしく見えます。
でも何を歌舞伎というのか、それはこちら側の単なる思い込みなのかもしれない、とも思います。
勘三郎(この時は勘九郎)は、大衆演劇としての歌舞伎の魅力を引き出そうとしているのですから。
面白かったけれど、ちょっとくどかった。
私は「研辰」に一票。
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