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「モーツァルト!」(山崎/涼風)@帝国劇場(その3)

12/14、12/16ときて、今日が最終回です。
昨日は涼風さんのことをたくさん書きましたが、
もう1人、様々な声を使う「モーツァルト!」になくてはならない人がいますね。
コロレド神父を演じている山口祐一郎さんです。
私はコロレド神父の「神よ、何故許される」を聞くたびに、
本当に毎回同じところで、
「ああ、今、山口さんでジーザスを聴きたい!」と
願ってしまいます。
本当に毎回。
あの神がかった、威圧と威厳と芳醇と起伏に富んだ歌声は、
誰の追随も許さない高みであり、独自の領域です。
それが
ザルツブルグの町を見下ろす館のそのまた上に君臨するコロレド神父に
本当にピッタリ。
単にモーツァルトが嫌い、というだけでなく、
モーツァルトの才能に身体がビンビン反応して恍惚とする、
その二面性の混在をこれほど見事に表せる人はほかにいないと思います。
「…驚異的だ…」
「…完全無欠だ…」のセリフから
「♪私を惑わす無礼で傲慢自惚れ愚かな男が創り・出・す!」まで、
山口さんのコロレド神父はそれこそ常に
「完全無欠」なのです。
神の次に偉いのは自分、と信じて疑わないわが身が
モーツァルトの才能の前にひれ伏す屈辱を味わいながらも
その崇高な音楽性に出会った喜びに浸る表情は、本当に見事です。
彼はこれまでモーツァルトがなした非礼をすべて水に流し、
恩赦を与えるから呼び戻せ、と父親レオポルドに指示する。
レオポルドは「それより別の天才を連れてまいりましょう」という。
コロレドはわくわくしながら「だれだ?」と尋ねる。
「私の血を受け継いだ、私の孫です。モーツァルト同様、私が創り上げました」と胸を張って答えるレオポルドに
コロレドは目を剥き、怒り、失望する。「お前の孫か!」
その後に続く
「♪人間は教育できる。猿でも調教できる。
 才能を見つけ出して育てることも可能だ。
 それでもなお作り出せない奇跡の子は、
 神よ、この私を笑い見下した男が
 今、完璧に進化を遂げた」
モーツァルトでなければ!
この歌詞の意味合いをしっかりと伝えられる山口の
歌唱力の上をいく表現力に、
本当に感服するのでした。
山口さんのコロレドは、何度も、何度でも聞きたいです。
また、
市村さんのレオポルドにはどんどん深みが増す気がします。
やっぱり子どもを持ったことが大きいのでしょうか。
子どもの才能を見抜き、磨けるという自負、
愛しながらもその「未完成」なところが心配で心配で、
ついつい先回りして口を出すところ、
でも世界中の人に「息子はすごいんだ」といいたい親ばかなところ。
同じ道を志し、闘い、敗れ、断念した先輩として
子どもに自分の果たせなかった夢を委ねることも、
多くの親がやってしまうことである。
そして
息子がどんなに恵まれているかを教えてやりたいのに分かってもらえない。
「自分を大切にしなさい」というのは、
親が子におしえたい一番大きなもの。
けれどそれは、
子どもにとっては最も理解できないことでもある。
その矛盾を、市村さんは
「うまい」を通り越し、「存在」として見せてくれる。
コロレドに呼び出され、「モーツァルト恩赦」の言葉を聞いた瞬間、
レオポルドの足はリウマチで不自由ながらも、喜びで一歩前に出る。
しかし
「ウィーンから連れ戻せ。ザルツブルグで私に仕えるのだ」の言葉に
こんどは左、右、と半歩ずつゆっくり後ずさりだ。
モーツァルトを愛している。
ザルツに戻せば息子らしさは潰れてしまう。
息子を意のままに矯正することしか頭になかった父が、
老いてようやく気づき出したのだ。
息子の、息子らしい生き方に。
人の前では息子らしさを擁護するものの、
息子の前に出ると、やっぱり「ああしろ」「こうしろ」。
それもまた、親というものである。
山口コロレドがカリスマの権化とすれば、
市村レオポルドは等身大の人間臭さ。
真ん中に、ヴォルフ。
それが「モーツァルト!」なのである。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
東京での公演は24日までなので、
何とかして「井上/香寿」の回を見たい、と思うのだが、
まず私が帝劇に行ける日が少ないので、
なんと千秋楽しか残ってない!
こりゃムリだよね。
誰か行けなくなったらチケットまわしてください~!
(追記)
この後、12/24千秋楽(井上/香寿)のみならず、
なんと、12/23の(山崎/涼風)楽日も行けました!

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