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「環境ミュージカル そして森は生きている」

暑い毎日が続いています。
これって地球温暖化のせい?
「今年の夏は特別」などと言っていられなくなってきました。
中国の工業発展があまりに急激で、
環境汚染がそのまま黄砂にのって日本に上陸、
光化学スモッグの頻発はそのせいではないかとまで言われています。
日本の中だけで環境を考えていても、防げないことがあるんですね。
日本海側の海岸には、船などから不法投棄されたゴミが、
海岸線がわからなくなるほど打ち寄せているところもあると聞きます。
マグロもウナギも、資源が不足していて、保護対象になるらしいし、
誰もが「環境」のことを「地球」レベルで考えざるをえなくなってきましたね。
実は、こういう危機に関しては、ずい分前から言われていたことです。
1984年には、すでに「環境と開発に関する世界委員会」というのが作られている。
へえー。
「地球市民が持続可能な暮らしを行うための指針」
つまり、これからも人間が地球で今みたいに暮していくためにはどうしたらいいかを、
国連の「地球サミット」はずーっと考え続けていて、
いろいろな国の人々が話し合いを続け、
この流れから、2000年3月に、「地球憲章」というのが発表されていたのです。
知ってました?
知りませんでしたよね。
私も8月10日、初台のオペラシティで「環境ミュージカル そして森は生きている」を観て
初めて知りました。
やっぱり、「会議」とか「憲章」とかって、なじみないし。
決まったことが書いてあるものも、小さな字でコチョコチョって・・・・・・。
その「地球憲章」を、ミュージカルにできないか?
歌って踊って演技して、
それなら少しは身近に感じてもらえるんじゃないか?
そこから生まれた環境ミュージカル「そして森は生きている」。
地球環境を考える国際会議を学生が傍聴する、という設定ですが、
ホルストの「惑星」や、レ・ミゼラブルの「バリケード・ソング」などを織り交ぜ、
「ペルシャの市場」をバレエで見せたり、「椿姫」のアリアを聞かせたり、と
観客を飽きさせない仕掛けが満載です。
「会議」を演じることで、その中に「地球憲章」の内容を盛り込み、
私たちに知らせてくれます。
誰もが教育の機会を受けられるように、とか、
国を越えて水資源を確保しよう、とか、
憲章の一つひとつは、「どこかで聞いた」「教科書的な」ものですが、
そうした憲章にのっとって何か行動を起そうとすると
隣同士の国の代表でケンカが起こったり、
いわゆる先進国と発展途上国で意見が食い違ったりで、
会議はなかなか前に進みません。
「あ~あ、会議ってどうして何も決まらないのかしら?」
会議に興味をもって、環境を何とかしたいと思う傍聴の人たちに、
こんなセリフを言わせて観客と心は一つ!
でも、いろいろ食い違う事情はあっても
「何とかしなくてはいけない」とみな思っているということが実感できるのです。
このゴールデンウィークにヨーロッパ公演を果たし、
この日は帰国記念のコンサートでした。
ジュネーヴでは、国連代表本部で公演をして、大喝采を浴びたそうです。
抑圧されたイスラムの女性が滔々と歌い上げる「椿姫」のアリアの哀歓、
迷彩服で銃を持って踊る若者たち。
銃声とともに、全員が倒れていく演出などは、
戦火の近いヨーロッパの観客に、どんな感慨を抱かせたことでしょう。
高い理想と改善されない現実とを、コンパクトに観客に伝えるこの舞台は、
演劇の作りもまた「理想」と「現実」の2パターンに対応するようにできています。
国連の会議場での会議を想定して作られているけれど、
椅子が10個もあれば、いつでも、どこでもできるミュージカルでもあるのです。
そして「会議」の場面では、必ずその土地の人を入れてやっています。
本当の国連の代表の人も入りました。
この「地球憲章」の作成にずっと関わってきた
参議院議員の広中和歌子さんや成蹊大学名誉教授の廣野良吉先生も。
今回は、鳩山由起夫衆議院議員夫人、鳩山幸さんも。
「実際に、この問題について熱をもって語れる人に出てもらうことが、
 またこの舞台を盛り上げるし、意義があると思っています」とは、
このミュージカルの総指揮をしている小池雅代代表の言。
彼女は「いろんな学校でこの舞台をやりたい」との夢も抱いています。
「その時は、生徒会の生徒さんや校長先生や、そういう人たちを会議のメンバーにしたいですね」
それはまた、
「環境問題を話し合う」ことが、「自分たちの問題だ」と気づかせてくれるのです。
自分と違う意見の人の役になれば、もしかしたら相手の気持ちもわかるかもしれない。
文字通り「ロール・プレイ」によって、
今までまったく理解できなかった人たちと心を通じ合えるきっかけになるかもしれませんね。
こうした「しろうと」を使うことに積極的な一方で、
帝劇ミュージカルなどにも出演が多い女優の若葉ひろみさんや、
ヴァイオリニストの尾崎輝代允さん、
ピアニストの佐藤にれいさん、
もとタカラジェンヌ調ゆうさんなどプロの人たちも多く参加。
忙しい日々の中でも「何かを伝えたい」と、こうした活動に参加する人たちにも敬意を表します。
そこには、
「クウォリティが高ければ、それだけ観客は舞台にひきこまれるのです」という
小池代表の思いが詰まっています。
「こんなにすごい人たちが、このミュージカルを支えているということを、
 皆さんにも知っていただきたい」
という気持ちから、
公演ではミュージカルに先立ち、
ピアノやヴァイオリンの独奏や、若葉さんの日本舞踊などが披露されます。
「でも、どんなにがんばっても観客がいなくては舞台は成立しません」
最後に私たち観客に向かってそういってくれた廣野さんの言葉も印象的でした。
観に行ってこそ、感動がある。何かが伝わる。
「そこにいた」「共に体感した」
この熱い思いが、未来の地球を変えていくのかもしれません。
この「国連クラシックライブ協会」は、9月の末に東京で「赤毛のアン」をやります。
こちらは、毎年東京、神奈川、埼玉、千葉をまわる人気のミュージカルで、
今年は軽井沢の大賀ホールでの公演をすでに終えています。
数年前にはアメリカのカーネギーホールでもやったことがある。
今年は榛名由梨さんや濱畑賢吉さんも出演!
ぜひ足を運んでみてください。

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