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「ビリー・エリオット」@ブロードウェイ

いろいろ見たブロードウェイミュージカルの中でも、
「ビリー・エリオット」のダンスは群を抜いて凄かった。
映画「リトル・ダンサー」の舞台バージョンです。
まず子役のビリー。
トリプルキャストでやっていて、
私の見たときはJoseph Harrington。
とにかく、踊る、走る、踊る、歌う、踊る。
踊るっていったって、
クラシックバレエはやる、
ちょっと袖に下がって靴履き替えて、タップはやる、
またまた引っ込んで着替えて縄跳びやる、
ジャズダンスはやる、チャールストンやる、
それでもって、息一つはずませず朗々と歌う!!!!!
もー、ただただリスペクト。
しかし、凄いのは彼だけじゃない。
ビリーを見出すバレエスクールの先生Emilly Skinnerがうまいのはわかるけど、
ビリーの父親をはじめとした炭鉱夫役の男性、
その炭鉱夫たちのストライキに対峙する警官役の男性、
みんなみんなのきなみバレエを踊るわけですよ。
バレエスクールの女の子たちと炭鉱夫たちのアンサンブルとか、
「バレエ」と「炭鉱ストライキ」を交互でなくて一緒に舞台にあげちゃって、
それで全然違和感なし。
基礎っていうのでしょうかね。一見メタボ体型のおじい様もですよ。
カーテンコールじゃチュチュはいてバレエ踊ったり、ラインダンスしたりもします!
楽しいことこの上ない!
また、
炭鉱夫と警官の衝突の中でほんろうされるビリー少年の、
盾(機動隊だったらジュラルミンだけど、こっちは透明アクリル)に
ぶつかってもぶつかってもはねかえされる少年の痛々しさもまたせつない。
ここでもビリーはエネルギー全開。
「あ、ケガしちゃうケガしちゃう!」とハラハラするほど走りまくり、跳びまくる。
そして、歌う。
どうしてこんなことができるのかな~。
サッチャー政権下の炭鉱組合つぶし、という
ものすごく暗い背景を持ちながら、
その背景をまったく知らない若い人をも魅了してやまないこのミュージカル。
もしあなたがニューヨークに行くことがあれば、必見です。
だって、
日本じゃまずムリだもの。
ビリー少年が田舎のバレエスクールでたまたま見出され、
ロイヤルバレエスクールに入学する、というストーリーは、
「炭鉱ストライキ」という部分を除くと、熊川哲也の伝記か?っていうくらい
彼のサクセス・ストーリーに似ている。
彼が最初にイギリスに着いたときは、きっとこんなんだったんだろうな、と思いながら、
ロンドンでテストを受けに来たビリーを眺めていました。
だけど、
じゃあもし今あのときの、12歳から14歳くらいまでの熊川がいて、
「ビリー・エリオット」のビリー役ができるかっていったら、
ここまでタップとかほかのダンスとか、それから歌とか演技とか、
できたかなって思うわけです。
「やれって言われればやれるよ」って彼ならいいそうだから、彼ならやれたとして(笑)、
あと2人、
熊川と同じかそれ以上の人材を連れてくるっていうのが難問でしょ。
そして1年たったら、もう3人、オリジナルキャストに勝るとも劣らない少年を連れてくる。
そういうことは、日本では無理だと思います。
だから「日本版ビリー・エリオット」は、
劇団四季もやろうとは思ったけど諦めたわけですね。
じゃあ来日公演か、とも思うけれど、
子ども3人連れてくるツアーって、けっこう難しいような気がする。
学校とかあるしね。夏休みとか?
そういう意味でも、
貴重な舞台を観ることができました。
さて。
この物語のラストは、
ロイヤルバレエスクールに合格したビリーが
単身ふるさとを後にする場面です。
精いっぱいの「いい服」を着て、ビリーはバッグ一つ担いで家を出ます。
そしてビリーは、舞台から客席に降り、下手の通路を通って退場しようとします。
あら、これって「花道」?
そう思った瞬間、舞台奥から声が。
「ビリー!」と。
親友のマイケル少年が、自転車に乗って登場です。
ビリーは通路を2,3歩進んだところで振り向いて立ち止まり、
そこで舞台中央にいるマイケルが言葉を交わします。
そのビリーの「立ち位置」たるや、歌舞伎でいうところの「七三(しちさん)」。
いわゆる「すっぽん」という、下からせりあがって登場する場所ですね。
花道を引っ込むときに、ここで一回立ち止まってひと芝居し、
お客さんにもう一度晴れ姿を見せていく、
まさにその場所で、ビリーは立ち止まり、振り向いたではないですか!
そしてビリーとマイケルがしっかりと別れのあいさつをすると、
ビリーはもう後ろ(舞台上のマイケル)を振り向かず、
まっすぐと前を見て、小走りに退場していくのでした。
すると、大拍手ですよ。
「チョン、チョンチョンチョンチョンチョンチョンチョンチョン……」と
柝(き)の音(ね)が聞こえてきた気がしました。
ブロードウェイでイギリスのバレエの話を観ながら、
頭の中で、吉右衛門の実盛の「夢じゃ、夢じゃ」の場面がダブるという、
稀有な体験をさせていただいたのであります。
単に「通路」を使うというだけでなく、
その様式や概念からして、
これは歌舞伎を踏襲しているな、と思った私です。
日本の芸能は、ほんとに愛され、研究されています。
次回は
「ライオン・キング」について。
ここにも文楽や獅子舞が応用されています。

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