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「冬物語」

彩の国シェイクスピア・シリーズも、第21弾を数えるまでになった。
11年前に「37作品ぜんぶやる」と宣言したときは、
「埼玉の、与野本町ってどこ?」っていうくらいマイナーだった芸術劇場も、
いまやニナガワといえば、とりあえず彩の国。
コクーンやオーチャードでもやるけれど、
彩の国ならちょっと遠くても、しかたない、行くか、となる。
11年経っても、周辺のお店とかがほとんど変わらないのだけがカナシーけれど。
とりあえず、
地域密着型の郊外劇場としては、成功しているのではないだろうか。
さて、
今回の「冬物語」、
テーマは「疑惑」そして「嫉妬」。
たとえば「オセロー」でも、夫人は貞淑なのに不義を疑われて殺される。
同じように、
シチリア王レオンティーズ(唐沢寿明)は、
自分の無二の親友であるボヘミア王・ポリクシニーズ(横田栄司)に
妻のハーマイオニ(田中裕子)が優しすぎることに疑惑の念を抱き始める。
それも、幕が上がって5分、いきなりテンションMAX!
初めは自分の胸をかきむしるだけだったのが、
もう我慢できない。
曲解に次ぐ曲解。
柄のないところに柄をすげて、
自分の妄想を正当化し、罪もない二人をどこまでも貶める!
周りの人たちは、ちゃんと反対する。
「絶対ちがいます!」
「あなたの名誉を傷つけます!」
「私たちを少しは信用してください!」
良識をもって王をいさめようとする人たちがたくさん。
それなのに、ああ、王は聞く耳持たず。
それなのに、
・・・なんか、王様に同情したくなっちゃう・・・。
・・・ふつうなら、絶対理解できないはずの、
イヤな男の典型に描かれているけれど。
ありそう。こういうこと。
私たちは王様じゃないから、恋人を牢につないだり死刑にしたりできないけど、
「お前、あいつに気があるだろ?」とか
「なんであそこまでいちゃいちゃするんだ?」とか、
そういう男は世の中にゴマンといるはず。
「ちがう」と言われれば言われるほど疑惑はふくらみ、
「私を信じられないの?」などと冷たく言い放たれて、頭に血が上り、
「そうか、俺のことを、二人して笑っているんだろう」とか勝手に想像。
中に出てくる「鹿の角が額から生えてきそうだ」という比喩が
ものすごくリアル。
男に限らず、女だって、憶測が憶測を呼んで、般若となること、あるよね。
愚かなんだけど、どこか哀れ。
きっと、何かコンプレックスがあるのよね。
人間って、弱いから・・・。
・・・そんなふうに味方してしまいたくなる魅力を、
レオンティーズは持っていた。
唐沢寿明が、めっぽう光っていたのだ。
難しい役なのに、非常に説得力がある。
それも「理屈じゃない」ところで。
彼の、「カン」の鋭さのようなものが、
長い長いセリフも一気にがなりたてても思いはきちんと伝わるし、
逆にほんのちょっとした軽さを見つけては笑いにつなげる。
レオンティーズの気持ちの揺れを、しっかり自分のものにしていた。
だから、
最後の最後に彼が救われるのが、
とてもうれしい。
ご都合主義もここまでくれば、とあきれてしまう部分もあるけれど、
おとぎ話(TALE)とは、最初からそんなもの。
めでたし、めでたし、じゃなくちゃ、やりきれません。
田中裕子は「ぺリクリーズ」に続いて二役に挑戦。
さすがの存在感ですが、
ハーマイオニ自体が「誇り高き王族の美女」という
完璧すぎ、正しすぎる女性であるために、
人間的な魅力がかえって半減してしまった。
人間的という意味では、
六平直政扮する羊飼いが最高!
捨て子を見て「かわいい、かわいい」とあやすところ、
「運がついた日には、少しはいいことをしようぜ」というところ・・・。
飾り気のない中に、ほっとするような人間のあたたかみを感じて、
とても心がほっこりした。
驚いたのが、瑳川哲朗だ。
帰りにパンフレットを見るまで、
出ていたことすら気づかなかった。
ものすごーく目立つ役だったのに・・・。
役者って、すごいなー、と感服した次第である。
喜劇としては「十二夜」に及ばないし、
波乱万丈の末のハッピーエンドとしては「ペリクリーズ」の方が上だと思う。
でも、
唐沢寿明は、いい。
「マクベス」「コリオレイナス」を経験して、
いよいよ自分らしい「舞台」に到達した感あり。
お見逃しなく。

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