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演劇・ミュージカル、この一年

今年もあと数日を残すのみとなりました。
この一年、印象に残った作品を振り返ってみたいと思います。
今日は演劇関係。
1月早々、「スウィニー・トッド」で始まった私のミュージカル鑑賞。
「マリー・アントワネット」「ジキル&ハイド」「モーツァルト!」と
日比谷界隈で日本のミュージカルのレベルの高さに圧倒された1年でした。
特に今季で「ジキル&ハイド」を卒業するマルシアには圧倒されました。
思わずもう一回チケットを買ってしまったくらいです。
新人では「スウィニー・トッド」ソニンがよかった。
来年は「ミス・サイゴン」のキム役をゲット、期待が高まります。
「モーツァルト!」井上芳雄・中川晃教のダブルキャストには、
それぞれの良さが感じられて、それによって作品自体が厚みを増しているのが
素晴らしいと思いました。
主役級の人々(山口・市村・香寿・涼風・吉野などなど)が脇をかためているところが、
またスゴイんですけど。
来日ものでは「ヘア・スプレー」の楽しさ+テーマの深さに脱帽。
「ヘア・スプレー」は映画も来ましたね。
来年はジョニー・デップ主演の映画版「スウィニー・トッド」が来ますよ!
今後の日本のミュージカルを牽引していくであろう井上芳雄が
ストレート・プレイにも出たのが井上ひさし作「ロマンス」
この中で大竹しのぶが歌った「タバコはいかが?」が忘れられません。
劇中、一回目と二回目をまったく違うニュアンスで歌う大竹。
彼女は決して「歌が上手」な部類の人ではないんですが、
女優が歌うということは、こういうことよ!っていうお手本みたいな歌い方でした。
井上ひさしといえば、蜷川幸雄演出の「藪原検校」も忘れがたいです。
長くて複雑なストーリーや人物相関図を、
「語り」でまとめた壌晴彦の実力、声と背中の艶で魅せた田中裕子に感服です。
シェイクスピア劇では「ヴェニスの商人」「オセロー」を観ました。
高橋洋のイアーゴ、吉田鋼太郎のオセローもよかったですが、
やっぱり市村正親のシャイロックでしょう。
ともすれば一本調子に終わるか、それでもなければ浮ついた修飾語の羅列に終わってしまう
シェイクスピアにあって、
ここまで人間シャイロックのすべての心の襞を自然に表現できるとは!
ドスの利いた声を出したかと思うと、ふっと笑いをかもすような調子もありという、
押して引いての自由自在に舌を巻きました。
演技という意味では、「NINAGAWA十二夜」で見せた菊之助の舞、亀治郎の可笑しみも秀逸。
やっぱり舞台は役者の力だ、と、思い知らされた一年でもありました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
チケットが取れずにテレビで観たものが、また、
素晴らしいものばかりで、ナマで観た人たちを羨ましがった一年でもありました。
蜷川演出・松たか子主演の「ひばり」は、
演劇の王道を行く正攻法の演出で、それに松と壌がしっかりと応えた形。
法廷と監獄という閉じられ動きのない空間で、
感情が縦横無尽にほとばしるスゴミがありました。
野田秀樹「THE BEE」では脊髄の奥の奥まで戦慄が走りました。
人間の恐ろしさをここまで静かに表せるものなのだという衝撃。
「割り箸」が、コワイです。
最後の最後に観たのが三谷幸喜「コンフィダント・絆」
涙ぽろぽろ、顔中ベショベショになりながら、胸の中に熱く幸せな気持ちがふくらんでいく。
「負けた…」と認めざるをえないその瞬間の描き方が、憎いほどうまく、
そこまでに至る伏線の緻密さにも舌を巻きます。
三谷の劇中歌は、コケることが多いのですが、
今回の「大丈夫あなたはいいひと~」というテーマソングは、
この劇のすべてを包んで素晴らしい効果を上げています。
でも…。
もし1作だけ挙げろと言われたら、やっぱり「三人吉三」でしょう。
ナマで観なかったことが、本当に、本当に、悔やまれます。
歌舞伎役者の力と、
河竹黙阿弥という大戯作者が紡ぎ出す極上の時間。
恐れ入りました。
というわけで、
浅草に行った時にたまたま脇を通った
河竹黙阿弥の住居跡の石碑とともに、今年の演劇評を終わります。
*各作品のレビューは日記のカテゴリー「演劇」「ミュージカル」「シェイクスピア」
 「くらべて観る・くらべて読む」をご覧ください。

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