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「エラゴン」

どこにでもいる少年が、実は「選ばれた」人である、という話を初めて知ったのは、
きっとディズニーの「王様と剣」だと思う。
中世の物語、円卓の騎士、アーサー王のお話であり、
「中世」「騎士物語」は、西欧の人々のDNAの一つ。
「きっとどこかにこの世界を救ってくれる人がいる」
「それは、今は何のへんてつもない暮らしをしている人」
「つまり、ボクかもしれない!」
という希望が、彼らの脳には埋め込まれているのだ。
この希望は、
「自分の出自」を知らない人々にとっての希望とも重なる。
だから
「スターウォーズ」もヒットするし、
「ハリーポッター」もヒットするし、
「ロード・オブ・ザ・リング」も然り。
こういう中世的冒険ファンタジーを読みあさった文学少年の一人が
「もう読める本は全部読んだ! これからは、ボクが書く!」
とばかりに15歳で書き始めたのが、このエラゴンだ。

数年かけて書き上げたクリストファー・バオリーニは、これを自費出版、
ある映画関係者が「息子が夢中になって読んでいる本」に注目して、
あっという間に映画化にまでこぎつけた。

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そろそろ「ハリーポッター」も終焉が近づいているし、
二匹目三匹目のどじょうを鵜の目鷹の目でさがしていた人々には
「これぞ!」という思いが強かったのだろう。
農民の叔父に育てられている少年エラゴンは、青い卵を見つける。
その卵から孵ったのは、ドラゴン。
エラゴンは、ドラゴン・ライダーとなる運命にあった。
彼を導く男・ブロムがいて、
何かと短慮な少年を助け、叱り、導き、ともに戦い、そして彼を救う。
彼はかつて、ドラゴンライダーだった。
そして、これから立ち向かわなければならない王ガルバトリックスは、
ブロムの宿敵である。かつては優秀なドラゴンライダーだったのに、悪に染まってしまった男。
はて
どこかで聞いたような…?
師弟関係・宿敵関係は「スターウォーズ」だし、
王の軍と戦うため反乱軍と合流せんとして冒険を重ねたり、
エルフやドワーフがいろいろ出てくるのは「ロードオブザリング」だし、
悪者が魔法使ったりして、主人公の体にナゾの傷があったりするのは、ハリーポッターだし。
ジェレミー・アイアンズ、ジョン・マルコビッチ、ロバート・カーライルなど、
助演に名優をはめこんで、
格調高い中世物語観を全面に、続編もあてこむ布陣なのはわかるけれど、
なんせ話が「どこかで…」の連続なので、
大人の鑑賞には、ちと物足りないのは否めない。
ただ、
原作を読んだ人に言わせると、原作はもっと紆余曲折があって
主人公の心の成長が丁寧に描かれているとか。
映画のあらすじとしては、
「ロード・オブ・ザ・リング」の三部作を120分でやってしまったくらい、
どんどん先に進んじゃうので、
きっと著者にしても面食らったことでしょう。
15歳が書いたお話として見れば、許せるところ多々あるのかも。
人生の複雑さ、社会の難しさなんて、
15歳にわかるわけないですもんね。
(といいながら、20代そこそこで作られた「人生を語らず」の歌詞は
50代や60代の人々を感動させるのだから
年齢を言い訳にしてはいけないのかもしれないけど)
「世の中にストーリーは23しかない」は
シナリオライターの重鎮・新井一氏の言葉。
そもそも、
どんな名作だって、その前のそのまた前の有名なお話をモチーフにしている。
そのモチーフは、
人々に安心感とカタルシスを与えるスイッチを有するからこそ、
モチーフを踏襲するところにヒットの可能性がある。
つまり、
「どこかで見たような」の世界を、どのように料理するかによって
世の人々に大いに受け入れられ、かつ作品のオリジナリティが新たに認められる資格ができるのだ。
とにかく、
120分だけでこの映画を断じてはいけない、と思った人が多かったのか、
「カットになった多くの場面」が見られる特別編が出ています。

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小説「エラゴン」は三部作で、
第二部「エルデスト」は既に刊行、
第三部は現在執筆中とのこと。
処女作がこの大長編のクリストファー君、
それだけの壮大な物語を頭の中に持ち、
そのイメージをコトバにする筆力を持っていることに敬意を表します。
まずは、三部作を無事書き終え、
その「宇宙」を完結すること、そして、
次の作品が特に大事ですよー!
(私、イヤミなお局さまになってる?)

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