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「キャッツ」@キヤノンキャッツシアター(横浜)~演出編

私が「キャッツ」を立て続けに観たのは、
品川東口にテントがあった1996年のこと。
あれからもう14年も経っているというのは驚異。
今や都庁が建っているあたりにテントを張って
日本で初めて上演されたのが1983年で、
それから7000公演を数えるというのだから、
私という一個人の14年前の思い出など、
四季にとっては単なる通過点に過ぎないのかもしれない。
でも、
誰にとっても「初」はもっともインパクトのあるものであり、
以来同様の舞台を観るときは
初舞台の演技・演出・舞台装置が心の「スタンダード」(基準)となっていくもの。
今回と14年前と。
もちろん、回転席の興奮はすごかったですよ。
この仕掛けは品川にはなかったし、
ここには必ず座れる保証もないけれど、
回転席や前のほうの席だけでなく、後ろの席にもネコたちは行って
観客へのサービスは以前より濃くなっているのはたしか。
みんな、歌も踊りも上手い。
レベルアップしているのは明らかだ。
でも、私は各所で物足りなさを感じた。
「前とちがう」のだ。
私の「スタンダード」に届かない。
ラム・タム・タガーもミストフェリーも小粒で、
他のネコたちがそれぞれ上手いだけに、埋没しそうな気配。
アスパラガスは朗々と歌いあげすぎて全然「おいぼれ」感がない。
バストファージョーンズは気のいいおじさんになりすぎて
金持ちのイヤラシサが見えない。
オールドデュトロノミーには、長老としての重さがない。
「ない」「ない」づくしに感じられたということは、
私にとっての「スタンダード」は、
今より全体のレベルが低かったとしても、それらを持っていた、ということになる。
技術的に及ばない点も、それを想像することができる世界観を提示していたわけだ。
特に品川で見たときのグリザベラの歌唱力はイマイチだった。
だから今回の歌には感心したし、本当に実力がある人だと思った。
でも
そのグリザベラでさえ、物足りない。
途中で「おね~がい~、私を触って~♪」
という、あの有名なフレーズの前後でも、何が変わったのかよくわからない。
じゃあ、
舞台に現れたときからオーラを発していたかというと、そういうこともない。
今までそばによるのも忌み嫌っていたネコたちが
なぜグリザベラに崇敬の念を抱くのか、
なぜグリザベラが「唯一のネコ」に選ばれたのか。
そこに説得力はなかった。。
演出も多少変わっているので、
没個性には役者個人の問題だけではないだろう。
群舞が多い。
14年前は、もっとソロやデュエットが多かった気がする。
たっぷりあった見せ場の中で、
ラム・タム・タガーもミストフェリーも、
「なにこれ?」「だれそれ?」ってのけぞるくらいの
破壊的なパワーとスピードとオーラを発していた。
そう感じただけかな?
とにかく、
ノラネコの「オレがオレが」が薄まって、
飼い猫のかわいらしさや人懐っこさ、仲良し感が増えた感じだ。
「キャッツ」は世界中で上演されているけれど、
演出は少しずつ違うという。
上から靴が落ちてくるのも、ロンドン・バージョンではないらしい。
今回は靴は横浜に関係の深い童謡「赤い靴」にちなみ、小さいが
14年前は、人がその中で寝そべることができるくらい大きな靴だった。
それがふいに落ちてくるあのインパクトは、
ネコたちのねぐらがゴミためなのだとか、
ネコたちがほんの小さな存在だということを実感させて
「キャッツ」の世界の幕開けとして素晴らしい演出だと思う。
この前「カンブリア宮殿」で四季の
(というか浅利氏の)めざすものを垣間見たこともあり、
いろいろ考えさせられた一日だった。
とにかく楽しかった。
でも
もし今日が私の「初」だったら、
14年後にまた行きたいと思うだろうか。
ほんとにおいぼれて哀愁漂ってたガスの姿、
すべてのネコたちが従うだけの叡知を感じさせたオールドデュトロノミーの沈黙、
「これだから金持ちはヤだよね」っていう臭いをプンプンさせていたバストファージョーンズ、
ロック・コンサートで上から飛び降りて骨折しちゃう歌手を
思わず連想させたたラム・タム・タガー。
「倒れるまで回ってやる~、でも絶対倒れないぞ~、ドーダ!」
みたいなミストフェリー。
今回は、ソツのない舞台だった。
宇宙からはみ出すくらいのエネルギーを、今度は期待したい。
*私の今回のお気に入りネコちゃんは、タントミールを演じた高倉恵美さんでした。
 体の線がとてもきれいで、ダンスと表情に切れと色気があります。
 歌ではなく踊り専門のようでした。
彼女の舞台は、また観てみたいな~。

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