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警察ものテレビの映画化:「相棒」から「浅見光彦」まで

「相棒」は、テレビ朝日の二時間ドラマで初めて登場、
「2」「3」とシリーズ化された後に連続ドラマになりました。
そして、その連続ドラマもさらにシリーズ化され、
今回、初めて映画版も登場したわけです。
「テレビから映画へ」「警察もの」というと、
一番に思い浮かべるのは、フジの「踊る大捜査線」。
同じような警察ものでありながら、この2つ、スタンスが違う。
「踊る…」はお台場の、いわゆる「湾岸警察署」の管轄で起きた事件にこだわり、
「本店」のお偉方が出張ってくるのを迷惑がりながらも協力して事件を解決する。
対して「相棒」。
主人公・杉下右京(水谷豊)は、そもそも「本店」直属の人で、
今は島流し的に一警察署の「特命係」に配属されているものの、
結局は元上司である検察庁官房室長・小野田公顕(岸部一徳)の命を受けて
難解かつ重要な犯罪の捜査を手掛ける、
という場合が多い。
いっつもなじみの小料理屋に入りびたり、お女将のたまき(高樹沙耶)と話しなんぞしちゃうところは、
同じテレ朝の藤田まこと主役の「はぐれ刑事」を踏襲しております。
水谷豊という俳優は、
知的かつひょうひょうとしてあまり「熱さ」を表に出さない役、というのが得意でありまして、
私が彼の演技でもっとも好きなのは「浅見光彦シリーズ」(日テレ系)。
この役は、
現在フジ系で中村俊介、その前は、現在兄の役で出ている榎木孝明が務めておりました。
榎木孝明は「天河伝説殺人事件」というこのドラマの映画版にも主演しています。
この映画が上映された1991年を境に、
私が愛して止まなかった水谷豊版「浅見光彦」は封印されてしまいます。
その後、
テレビではTBS系でドラマが復活、光彦役は辰巳琢郎、沢村一樹、
そしてその後フジで映画で光彦役をやった榎木孝明になります。
水谷豊の「浅見光彦シリーズ」を放送していた日本テレビは、
同じ二時間ドラマの枠で、
それまでの「光彦=水谷豊」「母=乙羽信子」などのキャスティングを踏襲し、
「浅見光彦」を「朝比奈周平」という名の新聞記者に鞍替えさせて
キャラクターの雰囲気まったくそのままの話を、何本かやったのでした。
脚本も、同じ岡本克己。
どういういきさつがあったのかは知りませんが、
何かあったんでしょうね。
何がどうしたかはわかりませんが、
私の中で、「浅見光彦」といえば、それは水谷豊。そのイメージは永遠に変わりません。
そして「相棒」の杉下右京を見る時、
私はどこかで水谷豊版の「浅見光彦」の面影を感じています。
光彦は一民間人(ルポライター)で、
取材で訪れた場所で次々と事件に巻き込まれるだけですが、
一見何の権力もないと思われていたこの男が、実は警察庁のお偉方の弟だとわかると、
警察の面々はいきなり平身低頭、協力的になるのであります。
だから「特命係」という一種のオミソでありながら官房長の覚えめでたき片腕として、
気がつくと捜査の中心にいる杉下は、
まさに「浅見光彦的存在」ともいえるのです。
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さて、現在公開中の映画版「相棒」
テレビ番組を映画にしようとするとき、往々にしてそうなるように、
今回もスケールが大きくなります。
事件現場は「東京マラソン」ぽい東京での一大マラソン大会。
事件の鍵を握るのは、「海外での」「昔のできごと」であり、
外務省を初めとする政界が深く関わっている…。
スケールは大きくなりましたが、その分いつもの「ひょうひょうとした」トーンはなりを潜め、
かなり社会派というか、マジメでストレートな警察ドラマとなっております。
この映画、よくできてます。
終盤が少し説明口調になるところ、
非常に悲惨な事件がもとになっているにも拘わらず、
「ゲーム」的な謎解きが主体になっていて、ちょっとリアリティに欠けるところ、
などなど思うところはいろいろありますが、
手に汗握る緊迫感が持続するところは、本当にすごい。
ただ「相棒」シリーズをこよなく愛する私としては、
事件の重みにレギュラー陣の持ち味が引っ込んでしまっているところが少々不満です。
そんな細かいことなんか吹っ飛んでしまうくらいすごかったのが、柏原崇。
出色の出来です。
薄暗がりで光る目、
ゆっくりと口角を上に上げ、ニヒルに笑う口元、
それらをまったく覆すがごとき
「全身を使った」激しい演技!
もう、釘付けであります。
大体、私は今回、彼が「相棒」に出演していることを知らなかった。
知らなかったのに、最初にちらっと出てきたその「目」に、
その目の演技に、ただただひきつけられた、ということです。
そういう役者さん、少なくなりました。
柏原崇は2003年、
「いつもふたりで」で松たか子の上司役として連続ドラマに出演していた時に体調を崩し、
2話で途中降板してしまったのです。
この時の彼、ほんとにスゴミのある演技で、
私は惚れこんで観ていました。
弱小出版社の若き二世社長、周りの重役からは軽く見られていて自らバカ殿っぽくふるまうが、
実は本と文学と会社をこよなく愛し、様々に思いを巡らし戦略も立てている、という二面性を
陰影深く演じていただけに、
代役となってしまった3話からは、話のスケールがふた回りくらい平凡になっちゃって、
ひじょーに残念でした。
そして「柏原崇の不在」は、私の中にぽっかり穴を開けたまま、現在に至っていたのです。
彼は2年ほど前からまた活動を開始していますが、
今回の演技を見て、
あの日止まってしまった時計が動き出したような感慨に身を浸しております。
うれしい、うれしい出来事でした。
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映画「相棒」の冒頭とラストは、桜田門のあたりの空からの映像です。
特にラスト、
次々と映し出される画面から、
警察(の建物)が「一体誰を、何を」守っているのかが
図らずも(なのか確信犯なのか?)如実にわかるようになっていて、
そこにドラマの核心さえ見えてしまっておそろしいほどです。

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