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ユゴー「クロムウェル序文」と「エルナニ」


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ここのところ、読書三昧。
今日はそのうち、外国文学関連のものを。
以前「鶴屋南北とユゴーには共通点がある」と思いつき、、
「エルナニ」読んだのがきっかけで、
「クロムウェル序文」にも手を伸ばすこととなりました。
私はフランス文学を専攻していたのですが、
ここでおそわったもので「仏文学史」と「演劇史」が
めちゃくちゃ面白かった。
ここで、たくさんの古典の「さわり」を知ったことは、
今の私にものすごくプラスになっていると思っています。
その中で
「ヴィクトル・ユゴー」といえば「エルナニ事件」と「クロムウェル序文」が
とっても有名な事象として出てくるので、
「名前」は知っていたのですが、
私は大学卒業して30年、この「エルナニ」も「クロムウェル序文」も
どちらも作品をきちんと読んだことがありませんでした。
今回読んでみて、
「エルナニ」は、戯曲全体としては古色蒼然というか、
今の時代にこれをこのままやってもまったく受けないだろうと思いつつ、
場面場面ではけっこうぐっとくるところがあって、
そういうのは、ユゴーの筆力というか、詩的な文体とエネルギーの賜物だと思った。
この作品は、戯曲として完成度が高いとか低いではなく、
それまでの演劇のお約束をどんどん破っていったことへの評価なんだと思う。
今見ればまったく当たり前のことを彼はこれでやった。
今まで女は馬に乗ってはいけないと言われたのに初めて乗った、とか、
くるぶしを見せるのもいけないといわれていたのに膝を出したとか、
その類のものだと思う。
じゃあ、ユゴーはどうしてそんな「掟破り」をやったのか。
それが書いてあるのが「クロムウェル序文」

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これは名文!
戯曲「クロムウェル」は全幕で6時間半くらいかかるという代物で、
まったく上演に向いてなかったらしいが、
この序文は長く生き残った。
残っただけのことはある。名調子にして理路整然、
この序文を読んでから演劇史を習ったら、全部わかる、みたいな感じです。
面白いのは
「先人はちゃんと約束事を守って名作を作っているじゃないか」という声に対し、
「鬼才たちは、 あんな約束事から自由だったら、もっと傑作を書いていた」と
断言しているところ。
以前も書いたけど、「三一致の法則」というのがあって、
それは時の一致、場所の一致、筋の一致なんだけど、
とにかく24時間以内、同じ場所っていうのはムリってはっきり書いてある。
「ラシーヌもコルネイユも、場所が一つじゃなかったら、
 その事件を報告する場面じゃなくて、臨場感あふれる事件現場を芝居にしてた!」
「僕たちもそういうのが見たかったよ!」って。
ものすごく共感することが書いてあります。
でも
そうした法則がおかしいっていうんじゃなくて、
ギリシャ時代にはそれがよかったけど、
そのまま金科玉条のように18世紀にもってきたってダメ。
今の時代に合った形に変化していく「自由」を認めろってことなの。
抒情詩のギリシャ演劇、叙事詩のホメロスを経て、
今はドラマを描かなければならない、という
一種の唯物史観的な演劇進化論を
若き日のユゴーは情熱的に訴え続けます。
古典をリスペクトしながらも、
「そのままなぞる=コピーする」だけでは芸術にはならない、と。
「言葉は変化するもの。変化しないものは死んでるのと同じ。
 だから、今のフランス演劇は死んでいる」
すごくわかりやすい。
演劇が好きな人、
シェイクスピアが好きな人、
フランス文学が好きな人は必読です。

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