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「ガチ☆ボーイ」

事故で記憶が1日しかもたなくなってしまった青年が、
自分が「生きている」という実感を学生プロレスに見出す話。
予告編を何度も見て、「見たいな」と思っていた映画です。
朝起きると、今自分の周りに起こっていることがわからない。
ある程度より前のことはわかるのだが、
昨日の記憶がまったくない。
頼りは克明につけているメモだけだ。
自分がなぜこのような状態になったのかも含め、
大事なことは全部メモして生活している。
あとは高校生の妹。
風呂屋を営む父親は、
弁護士を目指していた自慢の秀才息子の現状を、いまだ受け入れられていない。
「頭で記憶する」機能は失われたけれど、
毎日トレーニングをすると、体は確かに日々の活動を蓄積してくれる。
「トレーニングした」記憶はないけれど、
筋肉痛は残る。繰り返し練習して覚えた技は再現できる。
そこに、
主人公が生きる喜びを見出す話である。
同じような疾患を抱えている人を追ったドキュメンタリーを見たことがある。
入院先の輸液の選択不足によりビタミン欠乏に陥り、
ウェルニッケ脳症になってしまった人の話である。
毎朝、寝床に座り込んで、ボーっとしてしまう。
自分を、自分をとりまくすべてを、うまく把握できないのだ。
結婚している彼は、妻のことは認識できるが、
病気になってから生まれた子どもの存在を、すぐには理解できない。
毎日毎日、
妻との語らいの中から
「ああ、自分はこういう人生を送っているんだ」と納得すると、
また一日が暮れてしまう。
朝、寝床で起きると、ボーっとしてしまい、
再び妻から「どうして」「なぜ」を聞かされるところから。
というか、彼の場合、思考が途切れるとその前の思考が失われるので、
もっと大変そうだった。
この高次脳機能障害を扱った映画は存外多い。
サスペンス風にした「メメント」(前向性健忘)、
何度でも君を愛す的ラブロマンスの
「50回目のファーストキス」(短期記憶喪失障害)、
「頭の中の消しゴム」やその原作「Pure Soul~君が僕を忘れても」
(若年性アルツハイマー)などもその系列。
どんな病気にかかってもそうだけれど、
自分や周りがその事実を受け入れ、
その上で
どう自分らしく生きられるかを模索できるというのは
とても素晴らしいことだと思う。
お涙頂戴的障害者物語は大嫌いな私だが、
この「ガチ☆ボーイ」は生きる喜びに溢れていて、
そこがとても救われる。
「病気」がきっかけとなっている話だが、
「病気」でない人にも通じるものを感じさせる。
「病人は静かに安全にそっと暮らせ」という世間の暗黙の視線に
笑顔で真っ向対決を挑む秀作である。
原作は、舞台「五十嵐伝~五十嵐ハ燃エテイルカ」。
たしかに、なるほど舞台っぽい、と思わせる場面が多い。
原作者の西田征史が脚本を書き、出演もしている。
主人公の五十嵐を体当たりで演じる佐藤、
プロレスのサークルの友人役・サエコが好演、
主人公の父親役・泉谷しげるはさすがの演技でうならせる。

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