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「カンゾー先生」


カンゾー先生
「うなぎ」でカンヌ映画祭で二度目のグランプリを獲得した今村監督は、
次回作に意欲を燃やしました。
「カンゾー先生」です。
大きな賞を獲ったあとは、マスコミがぞろぞろついてきますから、
この「カンゾー先生」、
発表記者会見とか、露出度満点でした。
でも。
興行的にはイマイチだったのでは?
ジミ~な映画です。
主役が柄本明ですし。
集客力、なさそーですよねー(失礼)。
けれど、私は今村監督の映画の中でも、これが一番好き、というほど、
忘れられない映画です。
戦争中の田舎の医者。
どんな症状で診てもらっても
「うむむ、これは肝臓が悪い」。
こりゃヤブだ。
そこでついたアダ名が「カンゾー先生」。
前半はこのカンゾー先生の日常を淡々と描いていきます。
今村監督はカンゾー先生をはじめ、
どこか「時局」を真剣に受け止めていない
不マジメ人間(当時、彼らのことも「非国民」と言った)の、
不マジメな生活ぶりを中心にすえています。
軍の人たちからは、人間のクズみたいに言われちゃう人たちばかり。
世良正則なんて、原作者の坂口安吾をほうふつとさせる
だらしなーい着物姿でいっつも酔っ払ってるだけ。
物語が急展開するのは、後半もドン詰まりのあたりから。
戦況がどんどん悪くなっていく中で、
人間の本性がどんどんあらわになってきます。
戦時中、ぷらぷら、へらへらしていた人たちの中には、
実は多く真の愛国者がいて、
彼らは素晴らしい人間性ゆえに自分らしい生活をできずにいた。
あるいは、同じ「非国民」になるなら、
軍に反駁してムダに命を落とすより、
「不良」の類になって生き延びる方を選んだ。
そのことを、監督は、ニヤニヤ、へらへらしながら映画にしています。
そのたらりんとした作風は、まるで、カンゾー先生その人みたい。
「素晴らしい人間性」は、戦争をやりたい人たちののテキである。
なんてことがわかっちゃうこの映画。
今村監督、肝っ玉すわってます。
誰にでもやさしく、「肝臓が悪い」と診断してあげることで、
休ませてあげたり、滋養のつくもの食べられるようにしたり。
心がきゅんとなるほど、人の気持ちが切ない映画です。
この映画でデビューした麻生久美子が
「夕凪の街、桜の国」に出ています。

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